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日本人観光客の延べ宿泊者数が減少~2023年10月の宿泊旅行統計調査と出入国管理統計

(※ご質問いただいたので、都道府県別の延べ宿泊者数について2019年対比のグラフも追加しました)

観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2023年10月分が昨日(11月30日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。


2023年10月の延べ宿泊者数は前年同月比20.6%増

 2023年10月の延べ宿泊者数は5313万7210人泊であり、前年同月比で20.6%増加しました。2023年9月の27.9%増(速報時は27.8%増)から伸びが縮小しました。外国人観光客の寄与が22.0ポイントと、9月の22.9ポイント(速報時は22.1ポイント)から若干低下し、日本人観光客の寄与はマイナス1.4ポイントとマイナスに転じました。日本人観光客の延べ宿泊者数が前年同月に比べて減少するのは2021年11月以来です。前年にはあった「全国旅行支援」が無くなり、宿泊料が上昇したためでしょうか?
 1月から10月までの延べ宿泊者数の累計は約4.88億人泊で、2019年の1~10月累計(約4.99億人泊)にはまだ及びませんが、2018年の1~10月累計(4.4.8億人泊)は超えています。外国人観光客の2023年1~10月累計は8969万人泊であり、2019年1~10月累計の92%まで回復してきました。日本人観光客は2019年1~10月累計にほぼ匹敵しています。

「短期滞在」の入国外国人は2019年同月を超える

 こうした外国人観光客の増加の背景にあるのが、90日以内の滞在予定で入国する「短期滞在」の外国人、多くが観光目的と考えられる外国人の増加です。現時点で判明している2023年9月において「短期滞在」の入国外国人は196.4万人で2019年9月を超えました(1.05倍)。ただし、前年同月比でみると徐々に伸びが鈍化しており、このあたりが延べ宿泊者数における外国人宿泊者の寄与低下と符合しています。
 なお、早く実績値が判明する10月の訪日外客数は、251.6万人と2019年10月の1.01倍となり、日本政府観光局のリリースでも「新型コロナ感染症拡大後初めて、2019年同月を超えた」と書かれています。ただ、「短期滞在」外国人の方が1ヵ月早く2019年同月を超えており、外国人観光客の動向を見るには適切なデータではないかと思います(もっと早く発表できないのでしょうかね~)。

客室稼働率、ようやくコロナ禍前水準に近づく

 客室稼働率はようやくコロナ禍前水準に近づいてきました。2023年10月の宿泊稼働率は61.8%。前年同月(54.3%)に比べて7.5ポイントの改善です。9月の宿泊稼働率が1次速報の57.5%から今回公表された2次速報では60%へ上方修正され、2019年以前のコロナ禍前水準にだいぶ近づいてきました。

 宿泊施設タイプ別にみると、旅館とリゾートホテルがほぼコロナ禍前の水準にあるように見えます。2023年10月のビジネスホテルの稼働率は74.6%と前年同月に比べて10.1ポイント上昇し、2019年水準との差は2.7ポイントまで縮まってきました。
 一方、観光需要が中心のシティホテルの10月の稼働率は74.7%で前年同期に比べて13.8ポイント上昇しましたが、2019年以前の水準からはまだ差があります。

客室稼働率が例年の値を上回ったのは7県

 1ヵ月遅れで確認できる都道府県別データを用いて、2023年1~9月平均の都道府県別の客室稼働率を例年の値(2015~19年の1~9月の平均値)と比較すると、前月と同様に、7県(青森県、岩手県、新潟県、長野県、徳島県、愛媛県、高知県)が例年の値を上回りました。
 例年は外国人観光客が多かった都道府県の客室稼働率はまだまだ例年の値には及びません。落ち込み幅が大きい順に、(1)大阪府(マイナス17.2ポイント)、(2)京都府(マイナス14.5ポイント)、(3)沖縄県(マイナス12.3ポイント)、(4)石川県(マイナス9.9ポイント)、(5)神奈川県(マイナス9.9ポイント)となっています。

東京都の延べ宿泊者数の伸び、外国人の寄与大きく

 2023年1~9月合計の都道府県別の延べ宿泊者数の前年比を確認してみましょう。山口県を除く全都道府県がプラスになっています。最大の伸びになったのは沖縄県で84.6%増になりました。
 また、大都市や観光地を抱える都道府県では、外国人のプラス寄与が目立ちます。例えば、東京都は延べ宿泊者数が前年に比べて81.9%増加しましたが、うち71.9ポイントが外国人の寄与となっています。

 一方、4年前(2019年1~9月合計)と比較すると、前月から1つ増えて9都県(北海道、栃木県、埼玉県、東京都、神奈川県、愛媛県、高知県、長崎県、熊本県)で延べ宿泊者数が増加となっています。東京都が外国人観光客を中心に2019年対比でも大幅に観光客を集めてる姿が確認できます。コロナ禍の影響がなかった時期に比べてプラスになる都道府県が今後どこまで広がっていくかにも注目したいと思います。

クルーズ船観光客、9月は横ばい

最後に、「出入国管理統計」の「入国審査・在留資格審査・退去強制手続等」の中で把握される「船舶観光上陸」を許可された人数を確認してみましょう。いわゆるクルーズ船観光客で、宿泊需要にはなりませんが、お土産などの消費につながる可能性があるものです。
 2023年8月は2万5711人と若干減りましたが、9月は2万5073人とほぼ横ばいになりました。2019年9月と比べると14%。2019年同月に少しずつ近づいています。

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