「中高年ひきこもり61万人」は本当か?

昨日(3月29日)の各紙夕刊で「中高年ひきこもり61万人」という内閣府の調査・推計結果が話題を呼んだ。日経新聞の夕刊でも、「退職」が最多であることなどが見出しとなった。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43067040Z20C19A3CR0000

この記事のネタ元は、内閣府の「青少年に関する調査研究等」の最新の「生活状況に関する調査」である。リンクは下記の通り。

この調査のQ19では、ふだんの外出状況について、以下の8つの選択肢から選ばせている。

1)仕事や学校で平日は毎日外出する
2)仕事や学校で週に3~4日外出する
3)遊び等で頻繁に外出する
4)人づきあいのためにときどき外出する
5)ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する
6)ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける
7)自室からは出るが、家からは出ない
8)自室からほとんど出ない

以上の5)から8)のいずれかと回答し、かつ、その状態になって6ヵ月以上経つと回答した者を「広義のひきこもり群」と定義している。その際、以下の3つの条件を満たすものは除外している。

ア)自営業・自由業を含め、現在、何らかの仕事をしていると回答した者
イ)身体的な病気がきっかけで現在の状態になったと回答した者
ウ)現在の状況を専業主婦・主夫、家事手伝いと回答したか、現在の状態になったきっかけを妊娠、介護・看護、出産・育児と回答した者のうち、最近6か月間に家族以外の人とよく会話した・ときどき会話したと回答した者

有効回答数3248人に対して、広義のひきこもり群に該当する回答者は47人。有効回答数に占める比率は1.45%で、調査対象は40~64歳の4235万人なので、掛け合わせた結果である61万人となり、新聞・雑誌の見出しをにぎわしたのである。

ここまで調べて、違和感を持つ人はいないだろうか?上記の5)に当てはまる人(47人中19人)、6)に当てはまる人(47人中21人)は、すべてがひきこもりと言えるのだろうか?

例えば、定年退職して趣味を楽しんでいる人の場合、5)に当てはまらないだろうか?実際、47人のうち初めて引きこもりになった年齢は60~64歳が17%(8人程度か)と最も高い。また、ひきこもりになったきっかけは退職と答えた人も47人中17人である。回答に協力した人の中で、「自分は引きこもりだったの?」と驚いている人がいたりしないだろうか?

そもそも、このような雑(失礼!)な調査で、ひきこもり人数を推計することに何の意味があるのだろうか?日経新聞の記事では、内閣府の担当者が「40歳以上のひきこもりの人もいると国が公認することで、支援が必要なのは若者だけでないという認識を広げたい」と言っているが、果たして本当だろうか。必要なことは、どのようなケアをどうきめ細かく進めていくことであり、「たくさんいるぞ、大変だ~」と世の中をあおることではないと思うが…

さらに、調査するのであれば、例えば、一週間当たりの外出回数を直接聞いた方が良いのではないだろうか。そのうえで外出回数が少ない人に対して、何が外出を阻んでいるのかを聞いた方が、どのような政策が必要かを考えるのに役立つのではないだろうか。


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