パートタイム労働者の時給が前年同月比4%も上昇~2023年7月の毎月勤労統計(速報)
昨日(8日)、毎月勤労統計調査の7月速報値が公表されました。日経電子版が報じている通り、実質賃金上昇率はマイナスですが、本稿では名目賃金の内訳を引き続き観察していきたいと思います。
一般労働者の所定内給与伸び率が2%に近づく
2023年7月の毎月勤労統計調査では、フルタイムで働いている一般労働者の所定内給与上昇率が1.9%と再び2%に近づきました。ちなみに、6月の速報では1.6%上昇でしたが、確報値は1.7%と上方改定されています。
パートタイム労働者の時間当たり所定内給与(時給)上昇率は4%といちだんと高まりました。これは2020年平均で3.9%上昇した以来の上昇率です。パートタイム労働者の時給には、人手不足などの環境変化が反映されやすいため、時給の伸びが加速しているのは労働市場の需給が引き続きひっ迫しているためかと思われます。
就業形態計の賃金上昇率、ボーナスの押し上げなく鈍化
注目後が高い就業形態計の現金給与総額の上昇率は、7月は1.3%。6月の2.3%から伸びが鈍化しました。一般労働者は6月の2.9%から7月は1.7%へ伸びが縮小しましたが、パートタイム労働者は6月、7月とも1.7%と横ばいでした。しかも、パートタイム労働者比率が上昇しているため、就業形態計の現金給与総額の上昇率は、一般、パートタイムそれぞれの伸び率を下回っています。
パートタイム労働者の現金給与総額の伸びが変わらないのは、所定内の時給が上昇しているのに不思議と思うかもしれません。これは、総実労働時間が6月の1.1%減から7月は1.6%減へと減少幅が拡大しているためです。
残業時間減で所定外給与の押し上げが縮小
そこで、先月から、一般労働者に限定する形で、現金給与総額、定期給与、所定内給与の動向も観察しています。7月までの状況は下図の通りです。
定期給与は、所定内給与に残業代を加えたものです。所定内給与上昇率を上回る月が多かったですが、今年に入って両者の差はほぼなくなってきてましたが、7月はともに1.9%で並びました。一般労働者の所定外労働時間は7月に前年同月比マイナス(1.4%減)になってますので、無理はないのかもしれません。
現金給与総額は、定期給与に特別給与、いわゆるボーナスを加えたものです。7月は1.7%上昇と6月の2.9%上昇から大幅減速しています。残念ながら、ボーナスによる賃金押し上げは5、6月で終わったようです。
共通事業所に注目すると一般労働者の所定内給与の伸びはもっと高い
最後に、前年同月も当月も調査対象となった事業所(共通事業所)のみを集計した結果も確認してみましょう。毎月勤労統計は全数調査ではないので、前年同月と当月の調査対象の違い(サンプル替え)の影響をどうしても受けてしまいます。共通事業所に注目することで、その影響を取り除くのが狙いです(ただし、サンプル数が少なくなるという問題はありますが)。
下図の青い線が全サンプルを用いて算出している一般労働者の所定内給与上昇率、オレンジ色が共通事業所に限ったものです。オレンジ色の線の方がぶれずにじわじわと上昇率を高めている姿がわかります。そして、2023年7月の上昇率は2.3%と、5月の2%を上回りました。
ちなみに、共通事業所ベースでの一般労働者の2023年7月の現金給与総額は2.4%上昇。全サンプルを用いた1.7%上昇より高い結果になっています。
さらに就業形態計の2023年7月の現金給与総額は2.1%上昇。全サンプルを用いた1.3%上昇より高くなっています。
全サンプルと共通事業所ベースのどちらが真実に近いかについては議論が分かれるところですが、展望レポートを見る限り、日本銀行は共通事業所ベースを重視しているようです。来月以降も、継続してウオッチしたいと思います。