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経常収支黒字は減少トレンド?~2024年3月の国際収支

 昨日(5月10日)、2024年3月分の国際収支統計が公表されました。昨日の日経夕刊では23年度の経常収支黒字が過去最大になったことなどを報じています。本稿では季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら月次の推移を確認していきたいと思います。


季節調整値で見ると前月比増加になったが…

 3月の経常黒字は季節調整値でみると2.0兆円。急縮小した2024年2月から増加しました。2024年2月(1.4兆円)からの黒字拡大に寄与したのは第一次所得収支の黒字拡大(2月:2.5兆円→3月:3.2兆円)。貿易収支の赤字はほぼ横ばい、サービス収支は赤字が若干拡大(2月:▲0.2兆円→3月:▲0.3兆円)しました。
 一方、原数値の前年同月差は1.0兆円のプラスで2月(同0.4兆円)から0.6兆円拡大しました。貿易収支の前年同月差の拡大(2月:0.3兆円→3月:0.9兆円)が最も影響しています。
 貿易収支の前年同月差の拡大の主因は、2月にプラスになった輸入の前年同月差が再びマイナスになったことです(2月:1189億円→3月▲3541億円)。

輸入金額の前年同月差が再びマイナスに

 財別の動向がわかる貿易統計を見ると、輸入金額の前年同月比は2月(0.6%増)から3月(5.1%減)へ再びマイナスになりました。前年同月比の差(▲5.7ポイント)の主因は「その他」(寄与度の変化は▲4.2ポイント)。2月にプラスになったのも「その他」の急増でした。
 一方、鉱物性燃料のマイナス寄与は着々と縮小しています(2月:▲4.3%→3月:▲3%)。輸送用機器のプラス寄与も拡大しています(2月:0.0%→3月:1.6%)。
 価格要因を除いた実質輸入の季節調整値を見ても、2ヵ月連続で増加しており、輸入金額の前年同月差はいずれプラスに転じることが見込まれます。
 一方、実質輸出は久しぶりに増加しました。減少してきた自動車関連はようやく横ばい。情報関連や資本財の増加がけん引役となりました。今後、輸出が増えていくかどうかが貿易収支の行方を左右しそうです。

サービス収支の前年同月差は縮小

 サービス収支の前年同月差は縮小している(2月:0.17兆円→3月:0.10兆円)。
 2月に比べて前年同月差のプラスが拡大したのは輸送収支(2月:▲99億円→3月:464億円)と知的財産権等使用料収支を除くその他サービス収支(2月:▲1877億円→3月:▲1659億円)。旅行収支(2月:2235億円→3月:1707億円)、知的財産権使用料収支(2月:1426億円→3月:490億円)はプラス幅が縮小しました。インバウンドが注目されていますが、旅行収支の黒字をどんどん拡大させるのは、なかなか難しそうですね。

直接投資収益のマイナスが若干縮小

 第一次所得収支の前年同月差は再びプラスに転じました(2月:▲1435億円→3月:482億円)。ただし、その変化はわずかなものにとどまっています。
 2月から3月にかけての変化をけん引したのは再投資収益を除く直接投資収益(2月:▲3822億円→3月:▲1172億円)でした。
 なお、最近注目度が高い再投資収益ですが、下記のnoteで説明している通り、今年11月の国際収支統計公表時まで2022年5月以降の実績値はわからず、2022年4月の実績値と同じ値が入っています。よって、2023年4月以降の前年同月差はゼロになっています。

#日経COMEMO #NIKKEI

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