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結婚について考えてみる
大学卒業を控えた頃、当時付き合っていた彼と結婚する約束をした。婚姻届を役所に取りに行ったこともある。
その時は本気で結婚したいと思っていた。
彼と家族を作りたかった。
彼との子供を産んで、家族で楽しく過ごす想像が容易にできた。
その後彼とは別れてしまったし、今は結婚願望も薄れてしまって結婚とは程遠いところにいるけれど。
人はなぜ結婚するのだろう
友人とお酒を飲みながら議論したことがある。私はもちろんのこと、その友人は当時付き合っていた相手に振られたばかりで、結婚についてかなり消極的だった。そんな二人で酔いに任せて言いたい放題言い合った。
《メリット》
・一人じゃないと思える精神的な安定
・生活費を節約できる
・子供を産める状況が作れる
《デメリット》
・何かあった時の相手を養う必要がある
・苗字をどちらかに統一しなければならない
・親戚関係の行事が発生する
あくまで私たちの主観と偏見によるメリットデメリットだ。
メリットについて掘り下げたとき、
「生活費」問題→一人で生活に支障がないくらい稼げれば問題ない
「子供」問題→授かり婚でも問題ない
という論破ができてしまうので、メリットとしては弱いと思う。そうなると、結婚の唯一のメリットは「精神的安定」しかない(繰り返すが私と友人の主観による)。「精神的安定」というのは独身でも得られるとは思う。しかし、一人ではどうにもならない場面がいずれはやってくる。重い荷物を運ぶといった些細なことから、大病を患うなんて大きなことまで、なんでも一人でやりきるには、それなりの覚悟とお金、そして強靭な精神が必要だ。結婚することで精神的な不安要素は解消できるので、非常に大きな(だがしかし唯一の)メリットだといえるだろう。
そう考えると、人によってはデメリットのほうが多いかもしれない。
結婚すれば相手に対して様々な責任が伴う。パートナーが働けなくなってしまったら自分が働いて養わなければならないだろうし、まさに”病める時も健やかなるときも”支えあわなければならない。さらに今の日本では「夫婦同姓」が必須なので夫と妻のどちらかの苗字に統一しなければならず、自分かパートナーのどちらかが面倒な手続きに巻き込まれることになる。苗字に愛着がある人なら多少の悲しみや寂しさを伴うかもしれない。そして一番厄介なのは「親戚付き合い」である。パートナーの家族や親戚が素敵な人たちだったらメリットに転じるだろうが、親戚一同で嫁イビリなんかをされたらたまったもんではない。(当時付き合っていた地方出身の彼の実家に挨拶に行ったとき、東京出身だからというだけで親戚中が私を一目見ようと集まったのはさすがに面白かった)
ここまでが友人と私で繰り広げられた議論である。
議論というわりには明確な結論を出せずに終わってしまったが、きっと人は、こういったデメリットを差し置いてでも一生を添い遂げたいという”衝動”に突き動かされて結婚するのだと思う。
「この人となら一生一緒に居たい」
「この人の子供を産みたい」
もちろん、お互いの仕事のこととかその時の状況によってタイミングを計る必要があるが、何かしらの”衝動”が結婚には必要なのだ。
なぜ結婚について書いたかというと、最近、母の口から「結婚したい相手はいないの?」「孫ができたらかわいい洋服を買ってあげたいな~」というフレーズが頻繁に出るようになったからだ。申し訳ないが、母の期待にはしばらく応えられないと思う(そもそも”申し訳ない”と思っている時点でおかしな話なのだが)。
結婚をしたいと思う相手が今はいないこと、そして相手がいなければ”結婚したい”と思う衝動がわかないこと。ただそれだけのことなのだが、「今は結婚したくない」という一言を口にした瞬間に母はすごく悲しそうな顔をする。結婚したくないという思いには「今私は幸せである」ことが前提にあるのに、まるで私が不幸かのような顔をするのだ。
世の中的には「結婚=幸せ」「独身=不幸せ」という概念が出来上がってしまっているのも十分理解しているが、2021年、もうそろそろ”人それぞれ”だということが浸透してもいいのではないか。結婚を幸せだと思う人もいれば、結婚しないことが幸せな人もいる。「将来もしかしたら結婚するかもしれないけど、今は結婚したいと思わない」という選択肢だって許されていいはずだ。
これは独身の強がりかもしれないが、意外と一人でもやっていけるものだ。多少のあきらめと覚悟は必要かもしれないが、慣れてしまえば自分自身が自分の良きパートナーである。買いたいものも自由に買えるし、やりたいことをやりたいようにやれる。風邪をひいた時のために日頃から食料品をストックしておけば問題ないし、重いものを運ぶのだって何とかなる。大切な友人と家族を大事にして趣味に没頭する時間があれば、寂しさを感じることもない。
結婚するのもしないのも個人の自由なんだから、結婚というワードに縛られずにその個人の幸せを願える人が増えてくれたらいいな、と切に願う。