見出し画像

#3 真っ暗闇だったはずの未来

今日は10代最後の日。

昨日は疲れていて、家に帰ったら泥のように眠ってしまった。リビングの床の上で夜を明かした。久しぶりに床で寝た。床で寝たときのあの感覚はやっぱりベットで寝るときとは全く違って私は好き。硬いし冷たいんだけど、やさしい感じがする。ベットはたまにやさしくないときがあるから。床はいつでもやさしい。そんな気がする。あくまでも私の感覚だけど。

いつかのこの時期もうちの前の道路は工事をしていた。今年もしている。たまたまかな。
いつかのこの日もうちのトイレにゴキブリが出た。今年も出た。たまたまなのかな。
いつかのこの日も涼しくて半袖じゃ少し心許なかった気がする。今年も涼しい。なのに半袖を着てしまった。少し寒い。たまたまか。




10代最後の今日もきっと大丈夫な気がしている。

幼い頃、目標を立てるとか予定を立てるとか確実じゃない未来を夢見ることに疑問を持っていた。だから、友達と遊びの約束とか出来なかった。来るかもわからない明日の予定を守ることができるかわからなかったし、何より約束を破ってしまうのが怖かったから。

小学生の頃の二分の一成人式。二十歳の自分に向けて手紙を書かされることがあった。多分白紙で出した。自分の未来を決めてしまうのが今の自分なんかには到底できなかったから。そのときはまだ明日も明後日も一週間後も二十年後も、もっと遠い未来も真っ暗闇にみえていたから。その抵抗として真っ白のまま出した気がする。この頃はまだ、二十歳になっている自分を想像できなかったし、どこかで漠然と二十歳を迎える前にはもう自分は生きていないと思ってた。

中学生のときも未来のことで悩んだ。明日のことすら真っ暗闇で、なんにもみえたことがないのに、進路なんて決められないって。だから、運に任せることにした。幼い頃からの癖でまたそうしてしまった。私は私が夢の中で楽しそうに笑って過ごしていた高校に行くことを決めた。

高校時代はあの日みた夢の中そのものだったと思う。我ながら運は良い方なんだとそのときも思った。

だからきっと今日もこれからも大丈夫な気がする。




そんなこんなで二十歳を迎える。想像もつかなかった二十歳を迎える。幼い頃から抱いていた恐怖とは顔見知り程度にはなった。

そいつがたまに声をかけてくることがある。
「案外悪いものでもないだろう?」って。

私は空を仰いで少し考える。まだ答えは出てこない。
「まだわからないかな」
少し笑って言う。




いつか書いた産まれた日


この記事が参加している募集

#スキしてみて

526,418件

#眠れない夜に

69,412件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?