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#2 行きの電車

私はバイトに行くとき、必ず電車に乗ります。ゆらゆらがたごとと揺られて、バイト先までのらり行くのです。

ラッシュの時間帯じゃないから、座席もまばらに空いていて座れたりすることもあるのだけれど、そんなに座りたいとは思わないのです。座っているとどちらか一方の景色しか眺めることが出来ないから、そんなに好みじゃないんです。欲張りな私はどちらの景色も平等に眺めたいので、むざむざ自身の欲望に我慢を強いるようなことはしたくありませんし、片方の景色しか見ることが出来ないなら運賃は半額しか払いたくありません。そのくらい、電車から見える景色は価値のあるものだと思ってます。ずっと、乗っていてもいいのならずっと乗っていたいです。一日中電車に乗ったまんま、外の景色をスケッチしたり、写真に収めたりして、朝日が登って沈む瞬間も大きな窓に眺めていたいのです。だから窓の無い乗り物は乗りたくありません。なんだか不気味ですもの。

そろそろ、降りる駅が近付いてきました。
本当は降りずにこのまま乗っていたいけど、それは外の景色が許してくれないようです。

私は背中を押されるように、電車とホームの間をふわりとまたぎました。

ただ流れる 窓の外を
観るだけの お仕事です
どこに行くのか わからないのは
僕も同じさ

星野源/ある車掌

追伸

この曲を聴きながら、電車に揺られるととても心が安らいで、明日も頑張ってみるかって元気づけられます。ただ流れる窓の外を観るだけ、どこに行くのかはわからないけれど、私は生きています。そういうお仕事をしています。

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