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ローリング・ストーンズ「ベガーズ・バンケット」とビートルズ「ヘイ・ジュード」秘話。1968年8月

1968年8月、ローリング・ストーンズが、新しいアルバム「ベガーズ・バンケット」完成とミック・ジャガー(25)誕生日を祝ってパーティーを開いた。ミックとキース・リチャーズ(24)が経営するヴェスヴィオ・クラブはモロッコ産のタペストリーが壁を覆い、ヘリウム飛行船が浮遊し、メスカリン入りの巨大な銀製ボウル、ハッシッシ入りのケーキ、水煙草が並ぶ派手なものだったという。「300m先にトッテナム・コート・ロード警察署があるのが気がかりだった」とクラブ支配人のトニー・サンンチェスは回想した。

DJも兼ねたトニーがLP「ベガーズ・バンケット」をかけるとジョン(27)とヨーコ(36)も含む招待客たちは皆、大喜びで踊り、賞賛し、「素晴らしい!」と盛り上がった。A面は「悪魔を憐れむ歌/Sympathy for the devil」、B面は「ストリート・ファイティングマン/Street Fighting Man」で始まり「地の塩/Salt of the Earth」で終わる傑作アルバムだ。皆が狂喜乱舞するのは容易に想像できる。ミックとキースは客から口々に褒められ、上機嫌に歩き回っていた。

そこに遅れて、近くのトライデント・スタジオからポール・マッカートニー(26)がやってきた。トニーにアセテート盤を手渡した「ね、感想を聞かせてくれる?ぼくらの新曲なんだ」。トニーは、ビートルズの新しいシングル盤をターンテーブルにのせた。

Hey Jude Don’t make it bad                                       Take a sad song and make it better

ポールの歌が聞こえると、お喋りが一斉に止んだ。続く7分11秒間、誰一人、口を利かない。静寂がパーティー会場を覆い、全員が初めて聞くヘイ・ジュードに心奪われていた。喧騒からの静寂が曲の凄いパワーを物語っていた。

マリアンヌ・フェイスフルは回想する「とにかく、バーーン!まっすぐ胸に響いた。皆、その曲を聴くのは初めてで、ただただ圧倒された」
トニー「曲が終わると、ミックの不機嫌な様子に気づいたよ、だってそうだろう?あの悪魔を憐れむ歌が吹っ飛んだんだから」

ポールはこう覚えている「ミックが近寄ってきて言ったんだ、なんてこった!凄いじゃないか!二つの曲をくっつけたみたいだ。Hey Judeってパワフルな曲があって、最後には『Na Na Na』って突き抜ける、そうだろ」

ジョンは両目が飛び出そうな顔つきでトニーに「タクシーを呼んでくれ」と泥酔状態で言った。ミックはそんなジョンに、自分のアストン・マーティンDB6を使ってくれ、と申し出て窮地を救ってくれた。アシスタントがサリー州アスコットまで無事、ジョンを送り届けたという。

1968年イギリスでの歴史的な夜のエピソードでした。

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