マスクの匂いは春の匂い

僕はひどい花粉症もちで、この季節になると鼻炎薬とマスクが手放せない。
先週あたりから、例年通りマスクを着けているのだけど、なぜだか、マスクを着けると、なんとなく懐かしいような、切ないような気持ちになる。

旅行に行ったこと。花見をしたこと。卒業式のこと。サークルの新歓をしていたこと。
そういった春の季節の思い出が、時系列を無視して頭の中に浮かんでくる。

いったいどうしてなのだろう、とここしばらく考えていたのだけど、今日、ようやく気付いた。
匂いだ。マスクの匂いが、春を思い出させるのだ。

どうやら、花粉症で毎年マスクを着けているがために、
僕の体は、箱に入った60枚入りの、不織布でできたあのマスクの匂いを、春という季節と結びつけてしまっているらしい。
何とも、風情のないことだ……。
「匂いが記憶を呼び起こす」なんて、趣ある物語になりそうなものなのに。使い捨てマスクでは興ざめだなぁ。

でも、これまでただ辛いだけだった花粉症に、唯一ポジティブな要素が生まれたような気もする。……若干強引なもっていき方だけども。
寒いのが苦手なので、春が来たことを実感できるのは、素直に嬉しい。
そのように捉えて、もう春なのだな、と噛みしめながら、しばらくマスク生活を楽しむとしましょうか。

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