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🎧私のトントンおばあちゃん

話の流れでつい口からこぼれた言葉だった。

「私の中のおばあちゃんを呼ぶんです。トントンおばあちゃん」

だけどこれは多分、思いつきではなくて、いつも私のそばに、本当にいる。


母方の祖母はそれはもう、仏様のように穏やかな人だった。
朝起きると、まず仏壇に向かって必ずお経を上げる。
それから和裁をする。
俳句を書いて、声に出して読む。
時々ウトウトする。
まん丸の顔立ちで、お肌はモチッとしていて柔らかく、作りたてのみたらし団子みたいな温もりと、香ばしい香りに包まれたような人だった。

「仏様は見守ってくださるんだよ」
というのが口癖で、幼い私が悪いことをした時も、声を荒げて怒るというのではなく、どちらかといえばちょっと悲しそうな顔をするので、おばあちゃんに怒られた時は、私もなんだか悲しくなった。

私が知るおばあちゃんは、そんな風に陽だまりのような人だったので、穏やかな人生を歩んでさぞや幸せだったのだろうなと勝手に思っていたのだけれど、おばあちゃんが亡くなって、どれぐらいの月日が経った頃だろうか。
きっかけは忘れたのだが、母がふっとおばあちゃんの人生について話してくれたことがあった。

それは、あまりにも悲しい話だった。
何度も、何度も、彼女には辛い出来事が襲った。それは晩年にまで。
おじいちゃんは、私が小学生の時に他界してしまったので、最後はきっとおばあちゃんひとりが抱え込んだ。
それを私が、私の感覚で文章にすることは、どうしても出来ない。
この先もきっと書けないので、こんな風になんとなくで伝えるのは申し訳ないのだけれど。
苦しくて、私には救いが見出せなかった。

それなのに、どうしてあんなに穏やかな佇まいだったんだろう。


すまスパで、紫乃さんとお話をした。
紫乃さんには申し訳ないけれど、年齢のことは一旦全て忘れさせていただきます。

紫乃さんの雰囲気は、多分、私のおばあちゃんのそれだった。
穏やかで、にこやかで、なんだかいい匂いがしそうで、ホッとしたくて人が集う。
多分、清世さんが描いた柔らかなアイコンの絵(紫の着物を着ていたもの)と、数々の俳句でそう思っていた。

それから、これもまた清世さんの絵だったのだけど、闇の中、細い白の、まるで平均台の上のような危うい場所で筆をもつ紫乃さんの姿を見た。
一見頼りなさそうな線の細い女性なのに、陽炎のような何か燃えているような、情念のようなものを携えていて、私はそのギャップに、瞬間慄いてしまったといっていい。
でも、紫乃さんは「まさしく私」とそう書いていた。

紫乃さんがどういう人生を送ってきたかはわからないし、当然だけど、私のおばあちゃんと抱えているものは全く違うはずなのだけれど。

どうして、こんなに穏やかな声なんだろう。

そんなことを、おしゃべりしながら、実は思っていた。



そう思っていたのと、トントンおばあちゃんの話の流れになったのは、全く関係がないのだけれど。

そういえば若い頃、私は人の目がとても気になるタイプだった。
「誰かにこんな風に、あんな風に思われるんじゃないか」
そうして、とても不安になって、逃げたくなってしまう。

「大丈夫、そんなこと誰も思ってないよ」
「あなたは、いつもそんな風に他の人を見ているの?」
「自分の思っていることは、そのまま返ってくるからね」
「仏様はちゃんと見守ってくださるんだよ」

おばあちゃんの口癖だ。

あれはきっと、おばあちゃんが自分自身に言い聞かせていた言葉なんだろう。
いくつも身に降りかかった辛い出来事を、恨みや憎しみや悲しみの渦に放り込まないように。

私は、ありがたいことに、今のところ壮絶な苦しみは味わったことがない。
だからもっと簡単に、楽しく、テンポ良くおばあちゃんはやってくる。

私の背をそっと叩きながら。
トントントン、大丈夫大丈夫。

いつからだろうか。
私は、ホッと胸を撫で下ろす。
「うん、大丈夫」
トントンおばあちゃんが胸の中にいる。
不安になって呼ぶと、おばあちゃんは来てくれる。


だから多分、私はエッセイを書くときに、怒りを怒りで、悲しみを悲しみで終わらせるのがとても苦手なんだと思う。

「自分で思っていることがそのまま返って来るんだよ」
それは、時にキレイゴトとして収めようとしてしまう気持ちが強く出る。
怒りや悲しみがそのまま返ってくるのがとても怖いからだと思う。

きっと、笑って書いたものがそのまま返ってくるのが嬉しくて、私はちょっとクスクス笑いながら文章を書くのだろう。
紫乃さんから質問されたことをここに残しつつ。


紫乃さんおばあちゃん呼ばわりしてごめんなさい。
だけど、私はおばあちゃんが大好きです。
それから、思春期におばあちゃんに少し冷たく当たったことがとても心残りです。
だから紫乃さんが「おばあちゃんに雰囲気が似ているんだ」そう気づいた時から、なんとなくソワソワとしていました。
「怖かったらどうしよう」なんて思ったりしながら。
怖かったら、私のおばあちゃんとは違ってしまうんですもの。

お話しできてとても楽しかったです!
そして、やっぱり大好きな方で間違いありませんでした。
なんていっても象ですしね♪笑

そんな、ネタバレだらけの今回のすまスパはこちら。
(すまスパでは、楽しくワイワイお喋り盛り上がってます)
もうすぐ始まるピリカグランプリについても盛り上がってます。ピリカさんは、グランプリに備えてお目々のケアを始めてますよー!


水族館から脱走した夫の話。



そして、ペンギンカフェでは、穂音さんがお客さま♪
(まとめて記事にしてしまってごめんなさい!)
作詞・作曲・歌も歌えるのに小説まで。
とっても多才な穂音さん。
でも、それは降ってくるものじゃなくて、たくさん色んなところにひっかけて、少しずつ集めて溜まったもの。
そうおっしゃっていたのがとても印象的でした。
そのほか、音楽トークが盛りだくさんです!
ペンギンカフェのメニューも気になる、今日この頃。













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