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『そうなのか』最終話


あの人・・・からの手紙

最愛なる成花なのかさま

この日を待ち侘びていました。
良いご両親のもとで立派に育ちましたね。良い伴侶にも恵まれ、そして新しい価値観を受け入れて本当に素敵な形で幸せを築いていけると確信しています。心よりお祝い申し上げます。おめでとうございます。

突然の手紙で驚かないで聞いてください。
なのか・・・という名前は僕が考えました。大事な役目を担ったと思っています。責任も感じています。なのかちゃんの家族が幸せに暮らせるように遠くから、でもしっかりと見守ってきました。なのかちゃんは強い子で、多くの事をひとりで決めてやり遂げてきました。大会は優勝できたので安堵しましたが、トレイルコースで倒れていたのを偶然発見したときは少々焦りました。それからは無茶も減り笑。人を頼り甘えることが増えて今に至るのだと思っています。

なのかちゃん。不思議に思ったことがありますよね。ご両親はずっとなるか・・・と呼んでいたのではないのでしょうか?もう戸籍を見ましたね。それにはご両親の想いが詰まっているのです。愛のある文字が刻まれてその名前で呼んでくださったことと思います。

新しく戸籍を持つ際にどちらにするかを選んだら良いと思います。あゆかさんの姓を名乗るとも聞いています。またもや素敵なフルネームですね。これからは遠くから祈ることになります。どうか末永くお幸せに。そしてありがとう

わたしは青年に尋ねたが望む答えは返ってこなかった。両親に特に母に聞いてみようとは何故か思えなかった。

戸籍を見た。わたしの名前は美咲成花みぶきなのかと記してあった。なるかではなくなのか・・・だった。

その後の知らせであの人・・・はわたしたちのパーティー前に亡くなっていたらしい。若い時から心臓に疾患があったとのこと。最後まで出会うことはできなかった。

いつも守られているのを感じていた。だからひとりが寂しくなかった。そのあたたかさに包まれるためにひとりを好んでいた。

それがあの人・・・の存在だった。
わたしは忘れない。


「なのかちゃん!!なのかちゃん!!」


あゆかが叫ぶ。そうだ2回の時は手をつなぎに飛び込んでくるんだった。わたしも負けずにギュッと抱きしめる。今日からなのか・・・と呼んでくれるみたい。

役所に届けたわたしの名前は


草 成 花そうなのか







おしまい






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