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レビューBOX:映画、本の感想まとめ

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映画や本の感想、レビューをまとめています。
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アニメレビュー:宇宙空母ブルーノア(1979)〜海のロマン、男のロマン、ロマン派艦長土門の夢見るロマンティックを実現すべく海を彷徨い何千里‥‥、実は「ガンダム」を相当意識していたのでは?!

ストーリー  西暦2052年、宇宙から突如飛来してきたゴドム人工惑星により引き起こされた天変地異で、地球は壊滅状態となり、全人口のおよそ9割が失われるという惨禍に見舞われた。世界各所に開設されていた科学技術開発施設「ポイントN1〜N9」のうちN1とN9以外も破壊されてしまった。  高等科科学院の学生だった主人公の日下真も、学校内でゴドムの襲撃に遭い、崩れてきたコンクリートの下敷きになった科学者の父を眼前で失うことになった。しかし父は死の直前、真に謎のペンダントを手渡した。科

映画レビュー:ゆるキャン△(2022) 社会人となって現実を生きる彼女たちが非現実に思えるほど挫折も苦悩もなく、キャンプという遊び方をプロモーションしているだけの作品だった

ストーリー  社会人となった、野クルのメンバー。リンは名古屋のタウン情報誌編集者、なでしこはアウトドアグッズ販売店店員、あおいは地元小学校教員、千明は山梨県観光推進機構で、恵那は犬のトリミングサロンでそれぞれ働いてる。  ある日、今名古屋にいるんだが、と千明からメッセージを受信したリンは居酒屋で落ち合うが、そこで話が盛り上がり、千明は深夜タクシーで山梨のとある施設へリンを連れていく。そこは数年前に閉鎖された、青少年野外活動センターだった。荒れ果ててはいたが、富士山が見える絶

映画レビュー:ヤマトよ永遠に(1980)「愛とは信じあうこと」というけれど、作画技術の向上に肝心の作劇が追いつかず、ファンもそれに気づきはじめたのかも

ストーリー  西暦2202年、イスカンダルでの暗黒星団帝国との戦い(「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」)から1年がすぎていた。地球は以前にもまして繁栄していた。パトロール艇の指揮官として火星軌道付近を航行中だった古代進は、地球に向かって進む閃光を観測する。しかしその閃光が過ぎ去った火星基地には生存者はなく、古代は地球に危機が迫るのを感じる。  地球では、婚約者で藤堂司令長官の秘書を務める森雪が待っている。だが謎のロケットから武装した兵士が降下し攻撃を開始。瞬く間に地球は占領

アニメレビュー:機動戦士ガンダムUC RE:0096(2016) 宇宙世紀ガンダムを我が手で書き換えたいという自己顕示欲の塊を見せられた

ストーリー バナージ・リンクスは工業スペースコロニー<インダストリアル7>のアナハイム高専に通う学生。ある日、何者かに追われて逃げる謎の少女、オードリー・バーンがコロニーの空から落ちたところを助ける。彼女が「行きたい所がある」というので一緒に連れていくが、目的のビスト財団の屋敷の中で、彼は一角獣(ユニコーン)を描いた中世のタペストリーを見て、既視感を感じる。オードリーは、ビスト財団と「袖付き」と名乗るネオ・ジオン残党軍との間で行われようとしていた取引をやめさせるため行動して

アニメレビュー:推しの子(シーズン1)〜オタクから生きることを赦されなかった「推し」の子どもが、復讐を果たす‥‥のか?と思ったらどんどん話しが逸れてゆき‥‥核心にたどり着くことはできるのか?

ストーリー  アイドルグループ「B小町」のセンター、アイの熱狂的なファンである雨宮吾郎と天童寺さりなは、とある地方都市の病院の医師と患者。雨宮は産婦人科医、さりなは不治の病で幼少の頃からずっと病室で過ごしていた。雨宮は研修医の頃からこの病院におり、さりなとはアイのファンという共通項でつながっていた。ある日、その病院にアイ本人が受診しに来てそのまま極秘入院する。出産するためだった。ファンとして衝撃を受けた雨宮だが、医師として全力を尽くそうと決意する。しかし出産間近となったその

映画レビュー:地雷を踏んだらサヨウナラ(1999)戦場カメラマン・一ノ瀬泰造の足跡を追いつつ、彼がアンコールワットを追い続けた理由を心に刻む

ストーリー  1972年4月。一ノ瀬泰造(浅野忠信)はフリーランスの戦場カメラマンとして、カンボジア内戦の戦場にいた。小隊と行動をともにし、戦闘が開始されると、銃弾が飛び交う中、カメラを構えてシャッターを切り続ける。その恐れを知らない姿は、同業のティム・ヒル(ロバート・スレイター)を驚かせるほどだった。しかし写真の腕は今ひとつで、ティムのネガは150ドルで売れたのに、泰造のネガは10ドルにしかならなかった。ティムは彼に、戦場で危険を感じ取る能力が欠けている、と忠告する。泰造

映画レビュー:Winny (2023) 〜天然な天才プログラマーに翻弄されつつ魅了されてゆく弁護士、彼らの戦った相手は一体なぜWinnyを敵視したのか?が見終わったあと静かに腑に落ちてきた

ストーリー  ファイル共有ソフト「Winny」を使って違法にコピーしたゲームのデータをアップロードしたとして、京都府警が群馬県高崎市と愛媛県松山市で、それそれ1名を著作権法違反の容疑で逮捕した。京都府警ハイテク犯罪対策室の北村(渡辺いっけい)は、東京在住のWinnyの開発者、金子勇(東出昌大)に任意同行を求め、Winnyの開発を中止することに同意させ、誓約書を書かせる。書き方がわからないという金子に、北村は自作の文章を示し、それを書き写させた。文意に疑問を抱く金子だったが、

画像生成AIを使ってみたら・・・

 まずは、ヘッダー画像を見てほしい。これは何だろうか。おそらく10人中10人が、こう答えるだろう。「ガンダムだろ?」と。  だが、違うのだ。  私が1日出かけている間に、連れ合いが、画像生成AIを試しに使って、どんな画像ができたかを見せてくれた。そのうちの一つが、ヘッダー画像であるが、トリミングしない全体は、次のようなものであった。 「ジオン軍」と入力したら、生成された画像  正直、爆笑してしまった。ジオン軍が、ガンダムに出てくる軍隊というのは認識していそうだが、いろい

映画レビュー:ゴジラ-1.0(2023)〜それは、日本が経験した厄災と復興、その間で置き去りにされた人々のトラウマとの対決だった

ストーリー  第二次世界大戦末期の1945年、神風特攻隊の飛行士だった敷島浩一(神木隆之介)は、搭乗機の零戦が故障したと言って、大戸島にある整備隊の基地に不時着する。敷島の機体を点検した整備兵の橘宗作(青木崇高)は、どこにも不良箇所を発見することができず、敷島が特攻を逃れるため嘘を言っているのではないかと疑う。  その夜、敷島は海辺で不思議な光景を見る。深海魚が多数、浜辺に浮いて漂っているのだ。すると突然、巨大生物が彼らの基地に襲いかかってきた。橘は敷島に、零戦の20ミリ機

ドラマレビュー:どうする家康〜船頭多くして船山に上る 本当は一体どうしたかったんだ、家康?と言いたくなった

 年の瀬も迫ってきたので、2023年に見たドラマを振り返って、レビューを記しておこうと思う。今回は定番のNHK大河ドラマ「どうする家康」を取り上げる。  徳川家康を主役に据えた大河ドラマといえば、滝田栄が家康を演じた「徳川家康」(1983)と、津川雅彦が徳川家康を演じた「葵 徳川三代」(2000)に次いで3作目ということになる。戦国三英傑が登場する大河ドラマは数多いが、中でも家康は、その生涯が75年と当時としてはかなりの長命で、しかも織田信長と同盟を結び、豊臣政権の中では五

ドラマレビュー:ザ・クラウン(2016-2023)〜英国の「王冠」を継ぐ者と継げない者、それぞれがシステム存続のために傷つきながら回復していく、まさに大河のごとき大河ドラマ

 年の瀬も迫ってきたので、2023年に見たドラマを振り返って、レビューを記しておこうと思う。流行やブームにまったく疎い人間なので、今年のドラマではなく時期を外しまくっているが、そこは生暖かく見ておいてほしい。今回取り上げるのは、2016年から2023年に掛けてネットフリックスで配信された、6シーズン、全60話という大作「ザ・クラウン」である。  王女だったエリザベスがフィリップと結婚してから、ジョージ6世の崩御により王位を継承して即位。以後エリザベス女王としての数十年にわた

ドラマレビュー:愛の不時着(2019)〜ロミオとジュリエット以来の、障壁があるからこそ燃え上がる愛だけど、むしろ北朝鮮に親近感を持ってしまう

 年の瀬も迫ってきたので、2023年に見たドラマを振り返って、レビューを記しておこうと思う。流行やブームにまったく疎い人間なので、今年のドラマではなく時期を外しまくっているが、そこは生暖かく見ておいてほしい。  昨年からNetflixに加入して、何か面白いものは?というので見始めたドラマである。韓流ドラマを見るのは初めてで、その特有のノリに最初は少々違和感もあったが、たちまちストーリーに引き込まれてしまった。  韓国の財閥令嬢の主人公、ユン・セリは親の力によらず自力でビジ

ブックレビュー:名作が生まれた背景には、存亡を賭けた人々の攻防があった‥‥「ガンダム者〜ガンダムを創った男たち」

 本書は2002年2月から約半年間にわたって「Web現代」に連載されたインタビューに加筆するとともに、当時の資料等を収録して一冊にまとめたものである。インタビューされているのは1979年から1980年にかけて放映されたテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の制作に携わった安彦良和(キャラクターデザイン、作画監督)、松崎健一(脚本)、中村光毅(美術)、大河原邦夫(メカニックデザイン)、飯塚正夫(企画)、星山博之(脚本)、山本優(脚本)、そして富野由悠季(総監督)の7名に、サンライズ株

ブックレビュー:彼のハッタリに乗っかって、その自己実現の過程を消費する。彼が本当に共有していたものとは? 河野啓著「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」

 栗城史多という「登山家」について知ったのは、何度かのエベレスト登頂断念のあと、旧2ちゃんねるなどで「下山家」と揶揄され始めた頃だったと思う。七大陸最高峰・単独・無酸素登頂をめざし、最後に残されたエベレスト登頂チャレンジの過程を「冒険の共有」と銘打ってYouTubeで配信していた。その動画を見たことはなかったし、正直そのチャレンジにもさして興味を抱いたわけではなかったが、何度も登頂を目指しながら、結局「デスゾーン」と呼ばれる8000メートル以上の高度まで辿り着けずに断念する様