プロのマッチ
「マッチいりませんかぁ?」
その少女は凍えるような寒さの中でマッチを売り続けていた。今は裸足で帽子すら被っていない……おそらく凍死するのは時間の問題だろう。
マッチである俺はそんな様子をただ見守っていた。
ただのしがないマッチでしかない俺が出来るのは、自身をしっかりと燃え上がらせることだけだった。
少女はあまりの寒さに絶えられなくなったのか、ついに1本のマッチを取り出して火をつける。
俺は全力で自身を炎上させる。
俺を見つめる少女の目は、そのわずかな暖かさと明かりの中に何かを感じ取った……そんな風に俺には感じられた。
少女は続けて1本、2本とマッチを擦り続ける。
やはり、その少女は炎の中に見えない何かを見出しているようだ。
そして、少女はついに残った全てのマッチを擦って火を付ける。
ついに決心したか……俺は自身が消えるまで全力で燃え続けた。
「これで……もう凍えなくて済むわ」
木造の家に放たれた火は順調に燃え広がり続けていた。
あとがき
#ショートショートnote杯 の作品で407字でした。
あなたにとってのハッピーエンドはなんですか。
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Special Thanks!
ショートショートnote杯の公式記事の画像で目に付いた「プロの」と「マッチ」を組み合わせて自由お題のショートショートとさせていただきました。
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