見出し画像

【授業実践④】「学び合い」集団を作る情報科の授業実践

 今回は、高校情報科での「情報のディジタル表現」についての授業実践を紹介します。

学び合いの授業

 この単元では、学習者相互の「学び合い」を中心とした授業をおこなっています。学び合いとは、その名の通り子ども同士で教え合い、学び合い、自発的に学習していく授業形態のことです。この方法では、教材に演習問題(穴埋め問題、計算問題、文章問題など)を用いて、生徒たちが教科書や資料などから情報取集し、解答していきます。自分で解答できない箇所については、解答できたものに解き方や考え方を教えてもらい、問題を解いていきます。

 私の授業では、授業の始まる前に、ホワイトボードに「本日の目標」を書いておきます。課題は、以下のようなオリジナルテキストを事前に渡しているので、説明をしなくても生徒たちは今日の課題を把握します。

キャプチャ1

 授業の最初には、毎回「一人も見捨てずに、全員で目標を達成すること」の重要性について繰り返し語りかけ、課題に解答するための必要な最低限の知識だけを説明し、あとは生徒たちに任せています。

 課題が始まると、生徒たちは個人で黙々と進めていきます。15分~20分ほど経つと、課題をクリアした生徒がでてきます(そうなるように課題の難易度を調節してます)。クリアした者には、「自分の課題を進めるのではなく、困っている人を見つけて教えてあげてね。それが、君の学習にもなるよ。」と伝えてあるので、自発的に部屋を周りながら困っている人を見つけ、教え合いが始まります。また、課題に躓いている子にも、「黙って時間が経つのを待つではなく、助けを求めることが大事だよ。」と伝えてあるので、彼らからも「ここ、わからん!助けて!」と次第に声があがるようになります。

キャプチャ2

 「学び合い」の授業で意識しているのが、「一人も見捨てずに、全員で目標を達成すること」です。社会に出たときに、自分とまわりの数人で心地よいことを独り占めするのではなく、自分の得意なことを生かして、苦手な人を助けながら支え合って生きてほしい、という思いから、毎回の授業で「誰も見捨ててはいけない」ということを強調しています。一斉授業では、どうしても手が届かなかった生徒に対しても学び合いを行うことで、教員だけでなく多様な他者からも考え方を学べると考えています。これは、社会構成主義という学習理論からも非常に有効で、個人の発達と集団(コミュニティ)の発達を同時に促すような学習により、「集団が発達すれば個人が発達し、個人が発達すれば集団が発達する」というスパイラル構造を実現できるとも考えています。

ポイント①

 クラスが全員達成を目指すには、クラスの誰が課題を達成して、誰がまだできていないかを視覚化する必要があります。そこで、両面のネームプレートを使用しています。生徒の名前が書かれた磁石のネームプレートを、ホワイトボードに貼り、課題を達成したらネームプレートを裏返して「青」の状態にします。それによって、クラスの全員が、誰ができていて、誰ができていないかを瞬時にわかるように工夫しています。

キャプチャ4

ポイント②

 生徒が主体的に問題を解決できるよう、学習サイトを作成し、授業スライドや私が自身で撮影した短編の解説動画、参考リンクなどを用意しています。普段からYoutubeなどを日常的に使いこなしている世代だからか、動画から情報を得ることにほとんど抵抗はありません。自分に必要な部分だけを視聴し、不要な部分を飛ばすなど、能率的に情報を収集しています。

 すべての生徒が同じ学習教材から学べるわけはないので、躓きそうなところをピックアップしたりして、多様な学習教材を用意するように努めています。

おわりに

 「学び合い」による授業は、学習内容全般に適用することができ、自身のペースで学習できることから、多くの知識を習得するための効率性を備えています。また、他者に教えることを通して、学習の定着率が高まることも報告されています。

 しかしながら、問題を解く過程で養われる思考力は、あくまで既に存在する「正解」にたどり着くための思考力であり、「正解のない問題」に対しての思考力を養うのは十分ではありません。また、問題は教師から提示されているので、「問題発見力」を育成するにも十分な方法ではありません。

 したがって、上記の「学び合い」は、教科内容の知識習得には有効な手段として用いることができますが、答えのない問題に対して、納得解を出したり、知識体系を創造的に形成したりする力を養うには十分ではないと感じました。単元の学習目標に合わせて、適切に手法を選択していく必要があると思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?