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アボカドのアドボカシー/アボカドは悪魔の果実なのか

はじめに

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こんにちは!熊本県の小さな島でアボカド栽培を行う。農家の中川と申します!2016年、農業留学のためアメリカに1年滞在し帰国後は地元熊本に帰って、アボカド栽培を開始し早3年が経ちました。
過疎化により耕作放棄された土地を再生し、産地化を目標とし活動しています。

先日たまたまこんなニュースを見つけました。
近年の先進国によるアボカドブームが、生産国の環境破壊を引き起こしているというニュース。みなさんご覧になりましたか?

記事の論点は
①アボカドが一般的な作物比べ、生育に大量の水や土壌の養分を必要とすることから、水不足、土地の劣化に繋がっている
②輸送の際に排出されるCO2量
③需要の高まりと価格上昇から「グリーンゴールド」と呼ばれ、生産国に経済効果をもたらすと同時に、治安の悪化を招いている。

アボカド農家から伝えたいこと

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現在のアボカドブームは、確かにサスティナブルではない。(記事に同調)
補足理由:ケニアの象が激減していること
しかし、アボカドという食材自体は、素晴らしく栄養価が高くて美味しい。現代人にとって健康メリットが多く、愛される食べ物なのは事実だ。「悪魔の実」ではけしてない。

問題なのは、消費する側も、生産する側も、環境に無配慮、無計画なこと。
アボカドを愛する国のひとつである、日本でも既にそれらを解決する一歩として国産アボカド栽培が始まっています。「食べない」という行動は、木を見て森を見ず、なのでは。

あなたが今日手に取る食材の裏には、たくさんの人の手とその数だけのストーリーがあります。きちんと知って、選んで食べることが、逆に自然を守ることに繋がることを知ってほしい。
今回の記事を最後まで読んでいただき、「選ぶ責任」について考えるきっかけになれば幸いです。

記事に捕捉したいこと

アボカド栽培に必要な水の量は記事にもあるようにバナナの約2倍といわれ、生産国で知られるチリでは、特に深刻な水問題に直面している。

その引き金になったのは極端な「降水量の減少」と言われています。
というのも、2010年以降、チリが直面している干ばつは過去60年で最悪の状況で、この10年間に降った雨や雪の量は、過去の3分の2にまで激減しています。

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「引用:Martin BERNETTI / AFP」場所チリ・バルパライソのぺヌエラス湖  

原因として、地球温暖化などによる気候変動と、近年進出してきたアボカド栽培のために拡大した大規模農園が、無計画に湖の水を乱用したことが考えられるとの指摘があります。

干ばつにあえぐチリ中部では、手を洗うための水さえなく、40万世帯の150万人が、給水車から供給される1日50リットル以下の水で生活をしているそうです。
しかし、そもそもチリという国は乾燥地帯で干ばつが起こりやすい地域です。
そこに「環境変動による水不足」と「無計画な農地拡大のための森林伐採」が加わり、今回のような深刻な問題へと繋がっているようです。
一方、チリの2倍以上のアボカド生産量をもつペルーでは、その土地に合った農地規模、灌漑設備なども充実した環境下でアボカドがつくられており、深刻な環境問題には至っていません。

アボカド世界流通の現状

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現在、飲食店のメニューなどに当たり前に見かけるようになったアボカドですが、そもそもブームのきっかけは、1997年にアメリカがメキシコ産アボカドの輸入を解禁したことにあります。その後、フルーツの中で最も栄養価の高い食べ物としてギネス世界記録として認定され、健康志向の高まりやマクロビオティック人気にのり、ここ20年で爆発的に消費量が増えたのです。
 現在、アボカド・ブームは消費量世界一のアメリカから、ヨーロッパ諸国、日本、中国など各地に広がっており、その市場規模は世界全体で92億ドル以上にのぼると言われます。
更に生産地域も、南米からアジアやアフリカなどに、徐々に広がっています。

アボカドの栄養価・健康メリット

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今や、ヘルシーで栄養価の高い野菜の代名詞であるアボカドですが、ここで改めてその素晴らしい健康メリットをお伝えします。

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これだけでもう、女性に人気な理由がわかりますよね!

アボカドが好きな方が懸念する事に、カロリーと脂肪分があると思います。
その約20%が脂質といわれています。しかし、アボカドの持つ油分のほとんどは不飽和脂肪酸で、体内に溜まった脂肪を燃焼させ、コレステロール値を下げる効果があると言われています。
その他にも豊富なのが、
・食物繊維  … 腸内環境を整える
・カリウム  … 高血圧症やむくみ改善に役立つ
・ビタミンB … 「若返りのビタミン」肌や血管を老化させる活性酸素の働きを抑える

更に、このビタミンBは「脂肪性ビタミン」と呼ばれ、脂質と一緒に摂取すると吸収率がアップすると言われています。

まさに、アボカドは「美容と健康の塊」
女性が「毎日でも食べたい!」と言うのにも、納得してしまいます。

私たちの取り組み

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「写真提供:ゆす村農園」

日本の家庭でも日常的に食べられるようになったアボカドですが、多くの人が知っているようにその99%は輸入によるものです。
アボカドに限らず食料自給率の低い日本では現在、輸入に頼らない「食」への取り組み、そして人にも環境にも優しい農業へ、考え方のシフトがすでに始まっています。
メディアや飲食業界でも多く取り上げられ、農業分野での「SDGs」という言葉も最近ではごく日常的に耳にするようになりました。

私は、アメリカ留学の際、世界には1000種類以上のアボカドがあり、私たち日本人はそのうち1種類しか知らない、という事実を知りました。
国産アボカドをつくると決意した背景には、こういった問題を踏まえて未来を想像し、自分が行動しなければ、という強い思いがあります。


熊本でアボカドを栽培し初めて4年目の現在、過疎化がすすむ地元の耕作放棄地を再生し「日々の食卓に国産アボカドを届けたい」という目標を実現するため、クラウドファンディングに挑戦中です。


アボカドの種を使ったサスティナブルな事業

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近年、環境に配慮する企業が、使い捨てのプラスチック製品問題を解決するために、数多くのエコ製品を開発されています。
携帯用ストローや金属製ストローなどに続き、今注目を集めているのが、メキシコのBiofaseという会社が開発した「avoplast」です。

Biofaseは、製造業者などから回収した、産業廃棄物となったアボカドの種を再利用し、フォーク、スプーン、ナイフ、食品容器、そしてストローを製造。
従来のプラスチック製品と同様、「avoplast」も、熱いものや冷たいものに対し耐性があります。
「avoplast」は使用後、240日かけて無害な物質に分解されて土に還り、今まで産業廃棄物であったアボカドの種を再利用することで、種も、それを原料として作られる製品も、ゴミにならずに済むということで、非常に注目を浴びています。

アボカドが大好きな消費者の方へ、アボカド農家からのメッセージ

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 今回このニュースを目にして、私は、アボカド人気から生まれた環境問題全体の中で、それを生み出している人間ではなく「アボカド自体がワルものにされている」ことに、悲しい気持ちになりました。それと同時に、自身が4年前に決意したこと、目標に掲げたことが間違っていなかったということを、強く実感しました。

 アボカドは今、世界中で愛される食べ物になっていますし、これからもおそらく需要は伸びていくと考えられます。
 
生産者である私から、消費者の方へお伝えしたいことは、「アボカドを買わないで!」ということではありません。
アボカドに限らず、自分が手に取った野菜や果物が、どのようにして今ここにあるかを考えて選んで欲しい、ということです。

消費することは、生産者への応援になります。

もっと大きく言うと、将来あなたが、そしてあなたの子供たちの世代が、10年後、20年後も美味しいアボカドを食べるための投資でもあると考えて欲しいのです。

問題の断片だけを見て「食べない」と言う行動で「アボカドを食べること=環境破壊」という偏った伝わり方をさせてほしくないのです。
アボカドに限らず、全ての食べ物は地球の自然の恵みで成り立っているものです。つまり、先進国の安定供給を優先しすぎることは、少なからずどこかの国の環境に負担をかけている、ということです。

今回のニュースが、もっと多くの人が、自分の家族が食べるものを選ぶことに関心を持つきっかけに繋がってくれればと願います。


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