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6夜 だからICTはすすまない

 ここ数日マイナンバーカードの問題が世間をにぎわせている.主な問題は1.マイナ保険証で他人の医療情報がご登録されてしまっている
2.行政書類をコンビニで出力したところ他人の行政書類がでてきてしまう
3.公金受取口座で他人の口座が誤って紐づけされてしまっている
といったようなことらしい.
 マイナンバーカードが出てきた数年前,発行する人はなかなか増加せず,発行によるポイント還元などのサービスを提供することで,少しずつ増加したものの,それでも全国民の半数には届かない状況が続いた.しかし,健康保険証機能をマイナンバーカードに一元化して,健康保険証自体を廃止する方向でのアナウンスが広まってから発行者数が徐々に増加して80%を超える登録者数になったのはつい最近のことである.
 健康保険証機能のマイナンバーカードへの一元化が,それまでカードのセキュリティに対して疑念を抱いていた人々に「もはや,登録せざるを得ない」「登録しないデメリットの方が大きい」という結論へと導いた傾向があるといえるのではないだろうか.
 かくいう筆者も其の一人で、「きっと問題が発生するだろうなー」と思いつつも,「どうせ作らなきゃならないものならポイント付与されるうちにしようかな」という結論にいたり,「まあ,つくってもつかわなきゃいいか」と思っていたところ,最初に書いたような問題が噴出して,「やっぱりか」という次第で,こんなふうに考えてカードを作った人はきっと巷には多いに違いないだろう.
 ここで思い出すのは,消えた年金問題だ.
デジタルベースでの年金登録の際に,それまでのアナログ年金データのデジタルへの誤入力や未入力といった問題が国民年金,厚生年金すべてで発生した結果,数百万件のミスがあることがわかり,その対応に数年を要した.という笑えない問題なのだが,この問題,完全に解決したというニュースはどうも聞いていないような気がするのは筆者だけだろうか.
 今回のマイナンバーカードの問題も,人為的ミスが原因で,年金問題と同じ誤りを繰り返している.このカード問題では,当初,関係各省が「我々の所管事項ではありません.」と答弁したのも年金問題と同様である.
 どうも,この国の統治機構における多くの問題が縦割り行政に起因しているというのは,永遠に解消しない事実なのだろう.組織が肥大化すれば組織間の対立が生じ,やがてその組織は停滞するというのは,どこの世界でも同様であり,ある意味,この国の統治機構は典型的な例だといえるだろう.
 組織構造を変えるのは,太平洋戦争での敗戦ですら官僚機構を革新的に変えることはできなかったわけで,一朝一夕にできることではない.
 そうであれば,アナログベースからデジタルベースへの移行におけるヒューマンエラーは,ノンヒューマンによる移行手段を確立すれば解決できるものの,やっぱり縦割り行政が行く手を阻むという残念な結末が待っている.
 この国は,やっぱりアナログ国家であり続けるしかないのかもしれない.
そうこうするうちに,デジタルベースの国民は,みんなこの国からいなくなってしまうなどどいう笑えない話にはなってほしくないのだが・・・.
 マイナンバーカードはどこへいくのだろうか.

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