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通所介護の約半数が赤字 「危機的状況」「介護提供体制が崩壊する」の声=社保審・介護給付費分科会・・・という記事の紹介です。

先日目に入って気になっていた記事の紹介です。
通所が赤字・・・という事で、大きく見出しになっているニュースを見ましたが、これって仕方ないと思うんですよね。

コロナの影響があったとは言え、通所の経営戦略については、前々回の改訂で大きく基本報酬を引き下げられ、機能訓練等による予防活動に力を入れないと加算が取れなくて経営が成り立たない・・・というのは、その当時から散々と言われ来ていた内容です。

2018年介護報酬改定における通所介護の改定内容
「自立支援介護を重視する機能訓練」と「アウトカム評価の創設」が2018年の介護報酬改定での通所介護におけるポイントです。

多くのデイサービスが機能訓練指導員を配置することができるようにするため、鍼灸師も研修を受ければ機能訓練指導員の要件を満たすとされました。

機能訓練指導員を採用することができない事業所にも救済策として、外部のリハビリ専門職と連携し、機能訓練のマネジメントを行うことも加算の対象とする「生活機能向上連携加算」もはじまりました。

また、利用者のADLを改善したことが認められた事業所が該当する「ADL維持等加算」が設置され、デイサービスでの機能訓練のレベルの向上に対する支援が進められています。

けあタスケル

・・・にも関わらず、個別機能訓練Ⅱという加算要件をきちんと守らずにまともな介護予防(IADL訓練など)に繋がる個別訓練を実施しない事業所が多く、前回の改正でその加算は無くなりました。

2つ目の課題は、個別機能訓練加算ⅠとⅡの目的は異なるのに、目的に応じた機能訓練のプログラム内容が提供ができていないことです。

実際に、個別機能訓練加算Ⅰの目的は、筋力・バランスなどの心身機能の維持・向上を目指すものです。また、個別機能訓練加算Ⅱの目的は、食事、排泄、更衣などの日常生活活動や調理、洗濯、掃除など家事動作の獲得を目指したり、趣味活動、町内会などの社会参加を目指すものです。しかしながら、個別機能訓練加算ⅠとⅡを両方算定している利用者の機能訓練の内容にほとんど差がない状態でした。また、個別機能訓練加算Ⅱを算定している場合においても、生活機能に関する訓練はほとんど実施されていませんでした。

リハプラン

このほかにも元々2時間だったサービス提供時間の区分を1時間区切りにしたりといった元々あった変なルールの見直しもされました。
こういう改正で、やる事ないのに何時間も座ってるだけの状態がいくらか解消されたとは思いますが、それでも現状としてはあまり大きく改善したとは言えないのかもしれません。

この当時も、旧態依然とした運営から脱却できないデイは相当苦戦したと思います。
僕が所属している法人の通所介護事業所も、多くの事業所が古いタイプの事業所なので、このくらいの時期からどんどんと経営が傾き始めましたね。

今でも時短利用に対して積極策が打てない状態ですから、当時からニーズはあるのに受けない状況があったので、そりゃそういう経営をしていれば赤字になって当然でしょう、としか思えません。

こうして振り返れば、少なくとも2018年の改訂の時期から、通所については大幅な変化が求められていた事がわかります。
そしてコロナ禍によって否応なく変わった所もあれば、変われないままの所もあるという事でしょう。

厚生労働省の最新の調査結果では、多くのサービスで利益率が下がっていることが明らかにされている。昨年度の全サービスの平均は3.0%。深刻な人手不足に伴う人件費の上昇などを背景として、前年度から0.9ポイント低下していた。

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利益率の低下はどうしようもないと思います。
介護サービスは介護職員が直接サービスを生み出して提供している訳ですから、その人材が不足していれば、そのサービスの量も質も低下するのが当たり前で、それに伴って利益率が低下するのも当然ですし、採用にあたっての経費(紹介料など)が増えているのですから、当然の結果としか言いようがありません。

また、福祉医療機構が先月に公表した調査の結果では昨年度、通所介護の実に46.5%が赤字だったと報告されている。

JOINT

実は、通所の赤字については僕が所属している法人だけだと思ってました。
さすがに他の法人では情勢や状況に合わせて変革したりしているだろう・・・なんて思ってたんですけど、全国的に通所はやばい状況だったようですね。

コロナの影響とは言っても限定的とは思います。
ただ、通所への利用控えで高齢者の運動量や活動量が低下して身体機能が低下している、という社会現象も発生しているのも事実なので、通いの場の経営・運営については、しっかりと検討していく必要があると思います。

社会的なつながりを作れる場所として、通いの場はこれから先も必要で、場合によっては更に重要度が増すと考えています(介護予防や認知症予防など)。

この日の審議会では、日本医師会の江澤和彦常任理事がこうしたデータを踏まえ、「大変危機的な状況」と問題を提起。「介護施設・事業所の経営が立ち行かなくなるのではないか。昨年度のデータは、物価高騰の影響がまだそこまで反映されていないもの。これから本当に存続していけるのか、介護提供体制が崩壊するのではないか、と大変危惧している」と警鐘を鳴らした。

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介護事業所はどこも危機的な状況とは思いますし、いつ崩壊してもおかしくないくらいに人手不足・後継者不足の影響は大きいと思っています。

だからといって、少子化問題と同じですぐに解決できる問題でもありません。

個人的には、介護現場での育成指導の体制をしっかりした正しい状態にする事が最優先(定着できる職場環境)で、それが出来る指導者・リーダーの養成が必要と思いますし、これだけ介護職の処遇が問題となっている現状を考えると、成果制度や歩合制など、頑張れば頑張っただけ評価される仕組みの導入も不可欠と考えています。ただ、その為には、評価しにくい現場のケア内容について、サッカーでいう所の”アシスト”した職員の評価や、サッカーでいう所の自分から倒れて何かをアピールしているが何もしていない(戦況を左右しないし、その時間チームは1名少ない状態でプレイしている)職員についてマイナス評価できるくらいの思い切った変革は必要と思っています。

しかし、こういう感覚ってチーム感覚があれば相互に叱咤激励できて然るべきだと思うんですけどね。少なくとも中高の部活レベルでは出来ているチームがやはり強いです。・・・なぜそれが介護の世界だとできないのか不思議ですね。やはり、チームの成果や勝利(=利用者さんの生活・人生の質の向上)にチームのメンバーが向かおうとできてないので熱くなれないのかなぁ、なんて思います。

あとは、現場職員レベルで経営感覚を持てると強いチームになるんですけど、こればっかりは介護職員には難しいのかもしれません。
そのあたりわかってくると色々と面白いんですけどね。

このほか、全国老人保健施設協会の東憲太郎会長も、「大変厳しい状況と言わざるを得ない」と述べた。また日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は、「人材の派遣・紹介会社への支払いも大きいのではないか」と指摘した。

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紹介料とか本当に馬鹿になりません。採用すれば成功報酬で30万~100万円くらいの幅での請求を見た事があります。

30万円ですよ。
デイサービスの利用者1人あたりの単価が8000円として、37.5回の利用分です。
ヘルパーの利用者1人あたりの単価が4000円として、75回分の派遣回数です。ヘルパーでいくと、だいたい常勤のヘルパーさんが一か月で回る総数の70%くらいの紹介料(30万)という事になります。

それで定着してくれれば安いかもしれませんが、これがうまいこと三か月くらいで辞めたりするんですよね。多くの紹介業者が3か月までに退職したら成功報酬を減額する制度があるんですけど、3か月こえると満額の所が多いんですよね。僕の経験だけでも、3~5か月くらいで辞める人や、3か月で病欠になる人がいました。

人材派遣については、産休育休中のフォロー職員として活躍してもらえるメリットがあると思いますし、もしそれでいい人だったら契約期間満了後から直接雇用に切り替えるとかあると思うんですよね、要は活用の仕方の問題だとは思うのです。
事業所としては、そういう産休育休中の派遣業者利用の際は、派遣業者への支払いについて一定の補助を国から出してもらえると、もっと使いやすくなりそうですし、職場のマッチング制度にもなっていきそうな気もするんですけどね。

いずれにしても、介護予防などに資する取り組みをしてこなかったのであれば、赤字になって仕方ない結果だとは思います。

個人的な見解ですが、デイサービスでの運動ですけど、1日いて1時間程度しか運動していない、なんて事ではダメだと思っています。

少なくとも、僕が管理してきたデイでは、午前も午後も最低でも90分の集団体操をプログラムに導入してきました。
中には長すぎる、という職員からの意見で60分しかできなかった所もありましたが、それでも午前も午後もきっちり60分するように指示しました。

90分といっても休憩や水分補給をこまめに入れるので実質は60~70分程度の内容ですが、実際、最初に着任したデイケアでは100歳を超えるおじいちゃん、おばあちゃんが疲れもせずにしっかり取り組んでいたわけですから、そういうのも慣れと習慣なんです。
最初は疲れるししんどいけど、三か月もすれば何なら現場の介護職よりもお年寄りの方が疲れなくなって元気に運動してたりします。
人によってケースバイケースですけど、多くの方の身体機能が向上したし、精神的にも明るくなったと思います。

僕もたまに指導者で入ったりした事がありますが、やはりすぐに疲れて筋肉痛になりますもんね。運動の習慣は本当に重要で、そういう習慣作りができていれば、筋肉をつけよう維持しようという身体にも変わっていきます。

しかし、これは職員がいろいろと自発的な取り組みが出来ない段階の提案です。やれないならせめて運動してもらってくれよ、という僕からのメッセージでした。
個別の対応でいくらでも活動量は増やせます。
ちょっとした掃除を手伝ってもらったりでもいいし、家庭菜園的な取り組みだっていいんですけど、どうも職員が全員が同じようにできる内容じゃないとできない風潮が強すぎて難しかったです。デイのプログラムも同じで、利用者さん全員が同じように取り組めそうな作業だったりレクリエーションが企画されますが、何のためにそのようなプログラムを作っているのかを考えれば、そこは画一的なモノではなくてもよかったはずなんです。
画一的なプログラムは、ひとえに職員にとって都合がよくて効率がいいからです。集団生活の場なのでしかたのない面もありますが、スタート時点からそういう感覚であるのであれば問題です。どうしてもどんな工夫をしても無理だからこうしている、という理由が説明できないとやはりだめだと思います。

利用者さんは高齢ですから、ただでさえ老化によって筋肉量が低下していくので、身体を動かす習慣は必要ですし、それに伴った食生活も必要です。
せっかくデイでお昼ご飯も食べるのであれば、やはり前後でしっかり運動をしてもらうのがベストだと思います。

デイサービスの経営が厳しい、半分が赤字だ、というニュースの紹介でしたが、全てとは言いませんが、介護予防の取り組みをしっかりできていない事が原因だと思っています。
事業所評価加算とか、毎年とれる事業所じゃないと中々厳しいのではないかなぁ、と思いますね。

2024年度の改正がどうなるかはこれからの議論を見ていくしかないですけど、社会保障費用の削減の大枠の方向はずっと変わってませんので、介護報酬自体はやはり成果の出ている所(介護予防に実際に効果のある取り組み=要は介護給付費が少なくなる取り組み)を評価していく仕組みにしかならないと思います。

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