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「入浴介助に男性が来た時は泣いた」女性障害者の性被害、どんな支援が必要なのか・・・という記事の紹介です。

いろいろ気になる記事だったので紹介です。

女性であり、障害者である―。そんな複合的な「困難」を抱える女性障害者の性暴力被害を考える学習会(DPI女性障害者ネットワーク主催)が、京都市内であった。弱い立場にある女性障害者は性被害を受けやすく、支援にも課題が多い。京都の当事者や支援者が、障害者の性被害に求められる支援の在り方を考えた。

京都新聞

高齢者介護の現場経験が圧倒的に長い僕ですら、高齢で認知症があっても女性利用者さんへの入浴介助に男性が入る事についてはかなり問題があると思っています。
これは人手不足がどうとか、そういう次元の問題ではなくて、尊厳の問題だと思っていて、介護保険法に尊厳を保持し・・・と明記されている以上(そもそも日本国憲法でも全て国民は個人として尊重される・・・と明記されていますが)、個人の尊厳についてもっと敏感に対応しなければなりません。

中には平気そうな事をいってくれる利用者さんもおられましたが、介護が必要になるからといって、個人の尊厳を軽視してよいとは思えないのが正直なところです。

ジェンダーレストイレの問題でも結構デリケートな問題だと思いますし、公衆浴場の清掃員等の男性職員が女風呂に入れば大問題になると思いますが、それとこれと何がどう違うのかわかりませんし、同じ事だと思いますしそこは守るべき必要最低限のルールではないかと思います。

介護サービスに入っていても、手伝ってもらえないと過ごせないなんて情けない、生きている価値もない・・・なんて事をおっしゃられる方は多く、介護サービスを受けている時点でかなりしんどい想いをされています。
ですので、自分の尊厳を守るような要求を言ってしまうとワガママなのではないか、と思わせてしまっている状況もあると思います。
そういう状況下で、介護従事者が人手が足りないから仕方ない、介護してもらっているのだから我慢して当たり前・・・なんて事を言ったら終わりだと思っています。

■「性を持たない存在」と扱われる残酷さ

村田さんは41歳の時に事故に遭い、車いすで生活するようになった。学習会では病院で男性看護師から入浴介助を受けた経験にも触れ、「障害者が性を持たない存在として扱われることを残酷に感じた。(障害者が)性について話せる場所を作って障害女性の困難を知ってもらい、相談のハードルを下げたい」と力を込めた。

京都新聞

ちょっとこの病院の対応がわからないので何とも言えないのですが、少なくとも僕も周りの介護職や看護職なら、女性職員が対応できる調整をギリギリまで頑張りますし、対応できる別日等への変更を行います。それでも難しい場合は本人に説明をして、本当に男性が介助に入っても大丈夫かを何度も確認してからの対応になると思いますので、こういう事自体が発生しないような工夫をするのが普通だと思っていたのですが、こういう対応を現代でもしているような病院がある事に驚きでした。

学習会では、病院や施設などで障害者本人の意思に反して異性が入浴や排せつなどの介助を行う「望まない異性介助」も取り上げられた。

脳性まひがある佛教大大学院生の森本京華さん(24)は、20歳で初めてヘルパーを利用するまでの経緯を振り返った。なかなか条件に合うヘルパーが見つからない中、相談員から提案されたのが「女性」という条件を外すことだったという。

京都新聞

僕自身も女性利用者さんの入浴介助を担当した経験もあります。
管理者として、複数のデイサービスの管理をしてきましたが、必ず取り組んだのが、せめて女性利用者さんには女性スタッフが対応する女性限定での同性介助でした。

男性も同性介助でやりたかったのですが、現実的な問題としてまず男性職員が少ない事(日によっては僕だけの日などある)と、入浴の利用者さんの男女入れ替えのタイミングと同時に職員も男女で交代となると、かなり煩雑な業務になってしまい時間ロスも発生してしまうので、限られた時間内で結構な人数の入浴をこなさないとならないデイサービスの入浴介助では、完全同性介助というのは非常にハードルが高かったです。

一部のデイでは、男女で完全に同性介助はできましたが、女性は午前中、男性は午後から、という入浴の2部構成にならざるを得なくなり、光熱水費に影響が出た事や男性でも午前中の内に入りたい要望が多く出た事などから継続は難しかったです。

また、全てのデイで導入できたわけではなく、昔から女性の入浴や排せつは女性スタッフが対応してきた職場ではスムーズに行きましたが、そうではない女性の入浴も排泄も歴史的に男性スタッフが入っていた事業所では導入できませんでした。

価値観の差というか、常識の麻痺の差かな、と思いましたが、反対理由が興味深かったので今でも覚えていますが、女性利用者さんを女性スタッフだけで入浴介助するようになったら女性スタッフだけ大変になる、女性スタッフだけ入浴介助なんて不公平だ、というような意見でした。そこに利用者さん個人の尊厳を守ろうなんて気持ちは少しも無い様子だったので本当に話が通じない事が多かったです。

管理者だったので強権を発動して導入しても良かったのですが、現場レベルでの意識が変わらない限りは真の対応にならないと思って現場の意識を変える事に注力しました。たとえば女性の同性介助の入浴を実践していた職場では、その後何年も経過してメンバーの入れ替えもあって管理者も変った頃に、同性介助をやめるかどうかの検討をしているという話を耳にしました。その理由は業務効率化だったと思います。

当時の会社の経営理念にも利用者の尊厳を守るという文言があったと思いますが、尊厳よりも効率化か・・・と残念に感じたのを思い出しました。
その議論をしている流れで知ったのですが、女性の同性介助をしているデイサービスは、法人内でも少なかったようで、要は他でもやってないから非効率な事しなくていいんじゃないか?・・・というような流れがあったように感じたのを覚えています。・・・そういう問題か?と思いましたが全体の大勢がそのような状況であったのと、元職場の事について次に進もうとしている流れに対して反対意見を言うのもなぁ・・・という事で黙していましたが、個人の尊厳より重視される業務効率とは何だろう・・・と不思議に感じました。

ちなみに、障害でまだ若い方の排泄介助にも入った事がありますが、その条件として、男性職員でもよければ対応できます、という所をまずご本人に了承してもらってから入りました。
かなり重度の身体介護が必要な方だったので、地域で新たな担い手が作れない状況の中で、僕が在籍していた事業所に紹介がきました。地域で噂になっていたような方でしたので、そんな介護出来ないという職員が恐々入るよりも、まず僕が入ってコツや段取りを把握してフォローしながら少しでも担い手を増やせるようにしたいな、という想いで、上記の条件を了承してもらえれば入れるという形で返答して、ご本人から了承を得て入らせてもらった事があります。

男の僕ですら入る度に筋肉痛になるくらいの身体介護でしたが、少しずつ担い手も増やせました。当時、その方への介助が出来るようになったうちの二人が今、僕と一緒に働いてくれている事を考えると、本当によい仲間に恵まれたと思います。

今も結構大変な身体介護で、入浴と排泄と就寝の支援が必要な利用者さんがおられますが、やはり担い手不足で対応できない日があったりするのですが、その方にも僕が入ってよければサービス対応できる範囲が広がります、という提案はしていますが、ご本人からもいよいよ困ったらお願いするかも・・・とは言ってもらえてはいますが、まだ実際の介助には入っていない状況です。本当は嫌ですよね、男性に入浴や排せつの介助してもらうのって・・・。それでも必要だからお願いしないといけない、そうしないと自分の尊厳や生活を守れない・・・という次元で心を悩まされているという事についてしっかりと考えておかないとならないと思っています。

当時は異性介助という言葉を知らず、後に本でさまざまな課題を知った。「あの時は男か女か考える余裕はなかったが、異性介助のリスクを知り、一人の女性として自分の意見を持つことが大事だ」と力を込めた。

京都新聞

当たり前なんですけど、そもそも異性介助なんて事自体が想像していないのが世間一般だと思います。

トイレも浴場も男女で別なんですから、介助が必要だからといってそこが無くなるのが当然というのはおかしな話で、これを変に感じないんだとしたら、やはりそれば麻痺しているのだと思います。介助の常識は非常識、という事はよく言われてきましたが、これもその一つですね。

介助される側が意見を言うとワガママだとか言われる風潮もおかしいと思いますし、そういう方に対してわざとイジワルな対応する人もいるので何だろうな・・・と思います。

国は異性介助を「心理的虐待」に分類している。筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクトのメンバー岡山裕美さん(44)は「入浴介助に初めて男性が来た時は泣いた」「男性でも良いと納得しないと心が保てない」といった当事者の声を紹介。「望まない異性介助は性的な侵害。より強い語感の『性的虐待』として認識されるべき」と訴えた。

京都新聞

デイサービスでも女性利用者さんとの契約の際には、入浴介助では男性職員が担当する場合があります、と必ず説明してきました(女性の同性介助をしていたデイでは不要でしたが)。
その中で、男性はちょっと・・・という反応が少しでも見られた方に対しては、女性スタッフのみが対応できるように配慮しました。

やはり本人が納得してその介助を受け入れているかどうか、そういう本人の選択をきちんと重視しているかどうかですよね、大切なのは。
自ら選択する・できる、という事は、自立の大前提ですので、そこを軽視した対応がうまくいくとは思えませんし、こういうトラブルや虐待に繋がるのは当然と思います。

そういう所を軽く考えている人ほど、忙しいとか人手が足りないとか大変だ・・・というような感想を持つのかなぁと思いました。

実際、現場では人手不足ですから大変な事も多いにあります。
本人が望むような支援ができない事もあるでしょう。
だからといって尊厳を軽視した対応が許されるという事はないし、それとこれとは別問題だと思います。

現場の職員を守るためにも、事前の同意の取り方や確認方法については、事業所レベルできちんと丁寧に徹底しないといけないと思いました。

昔、同性介助に否定的な女性スタッフに聞いてみたんですよね。
あなたが入浴中に男の人が入ってきても良いの?って。
そしたら当然にように、嫌ですよ。という訳ですよ。

当然ですよね、怖いですよね。普通に考えたら。

【入浴介助に初めて男性が来た時は泣いた】

普通の事が書かれていると思いますし、この文面だとその後も何度か入浴介助には男性が入ったような感じですよね。少しずつ自分の尊厳が失われていく辛い経験をされたのだろうと思います。

前段の女性スタッフとこの記事に出てくる障害のある女性の年齢は同じくらいですので、忙しいとか大変だとか人手が足りないと言っていても、自分はされたくない事を平気で他人にしているわけですよね・・・。

高齢であったり障害があったりすると”女性”として見なくていい、というのを同性である女性が平気で言ってしまえる事に恐怖したのを今でも覚えています。

しかし、普通に疑問なのはいくら看護師も介護職員も男性職員が増えたとは言っても、まだまだ女性職員の割合の方が圧倒的に多いと思うんですよね。
なんでこんな状況になるのか本当に分からなくて、本当に職場や担当者の感覚が麻痺していて気が付かなかったのかなぁ・・・。

普通に考えて人が嫌がりそうな事をしなさんな・・・と単純に思いました。

あ、それとこのニュースですが、いろいろ活用できそうな気がします。

【 国は異性介助を「心理的虐待」に分類している。】

これ、国や厚労省・財務省は現場の人員基準の緩和を進めようとしていますが、現状でも異性介助をせざるを得ない状況があるのですから、今まで以上に現場から職員を減らす判断というのは、この国の判断と矛盾しているとも言えます。

そういう虐待をおこさせない体制を構築できる制度にしていくのが重要なんでないかと思いました。

・・・まぁただ、体制の問題については本当に深刻で、そうはいっても労働人口がどんどん減少していく状況の中で他産業よりも処遇改善が遅れている状況ですので、まず介護職が増える見込みがないんですよね。現に減ってますから。・・・そう考えると、本当に深刻な問題でもありますが、介護職としては、最優先は尊厳を守るべき事で、それが困難であるのであればそれは制度が悪いという事であって、利用者さんや患者さん本人が悪いなんて事は絶対にない、という事は肝に銘じておくべきだと思いました。


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