見出し画像

#18-S 人は「手抜き」が大好き

三浦 麻子, 小林 哲郎, オンライン調査モニタのSatisficeに関する実験的研究, 社会心理学研究, 2015, 31 巻, 1 号, p. 1-12

心理学の調査的手法を用いる分野では「Satisfice」というものが問題になっています。
Satisficeとは、「努力の最小化傾向」のことを指します。ヒトは、何かの目標を達成するためにかける努力(労力)を最小化するという傾向があるのです。当たり前のようですが、これが心理学的調査研究を行う分野(多いのは社会心理分野)ではかなり問題になります。

調査研究とは、質問紙やオンラインアンケートなどの手法を使って心理に関連する何かを測定する手法です。基本的に数百人以上の大量のデータが集められ、統計的に処理されます。
例えば、「あなたは、他人の顔色を伺うほうだ」という質問に「まったく違う ~ とてもあてはまる」の5段階で答える、というようなもの。似たような質問が繰り返され、特定の心理学的概念が測定されます。

大学生のころ、こんなので何がわかるんだろ?と思ってたけど、統計を一応身に着けた今ではその妥当性・信頼性の高さに納得しています。


さて、それでもこのタイトルです。これは2015年の三浦・小林 (2015) 論文が示した、Satisficeによってかなりの割合でオンライン調査のモニターは質問文を読んでないという観測結果から来ています。軽く説明しますが、日本語でフリーなので、興味があればぜひご一読を。

この研究では、教示文(質問文)をちゃんと読んで、指示どおりに行動する回答者がどの程度いるのかということを検討しています。

オンライン調査の問題をやや長文にし、最後の方で「以下の問いには何も答えずに次に進んでください」と明示して、それっぽい問題文を並べます。つまり、この調査では「回答をしない」が正解になります。

2社のオンライン調査会社(匿名でした)の協力を得てこの調査を実施しました。



その結果。。。




なんと1社では51.2%、もう1社では83.8%の回答者が答えてしまった(ちゃんと問題を読んでない)という結果が…!






驚きですね。これまでの様々な(本当にたくさんの)調査研究も、どのくらいこの影響が出ているのかわかりませんね。。。





ただし、そもそもこのような調査の場合、個々の項目の問題文が重要であって、最初の文章を長文にしてしまうのは設問がよくないのではなどの反論もあります。



にしても平均6割強って、人って想像以上に手抜きがスキなんだな~って思いますね…!

ちなみに私も調査研究やってますが、必ずルアー項目(手を抜いてないかを調べる項目;「この問いには回答をつけないでください」など)を入れています。私の手元では、Satisfice率は4-5割です。

まとめ
人は手を抜く!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?