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#26-S ぼんやりの心理的メカニズム

久々の更新…。怠惰爆発ですね。忙しいとはいいたくない。。

さて、気を取り直して。#23にて「ぼんやり」について紹介しました。

この研究をきっかけに、「ぼんやり」、正確には「マインドワンダリング(以下MW)」という現象が認知科学領域で注目され始めました。

今日は、その心理的メカニズムについての仮説を紹介します。要は、「なぜぼんやりとするのか」という話です。もちろん科学的に検証されたもの。気になりませんか??


それでは、ご紹介します!


と、その前に重要になるのは実行機能という概念です。抽象的でぼんやりした概念なので、いくつかの定義を引用します。この3つを理解して統合してくれれば、なんとなくの理解はOKかと。

定義1:実行機能とは、目標のための計画を立て、目標を達成するために自分の行動や思考、気持ちを調整する機能のこと<https://www.kaien-lab.com/faq/2-faq-diagnosis/executivefunction/
定義2:複雑な課題の遂行に際し、課題ルールの維持やスイッチング、情報の更新などを行うことで、思考や行動を制御する認知システム、あるいはそれら認知制御機能の総称<脳科学辞典>
定義3:目的を持つ一連の活動を効果的に行うために必要な機能で、情報を一時的に記憶しながらそれを使って作業する機能や、思考や行動を制御する機能などを含む。一言で表現すると「課題を段取りよくこなす能力」とも言えるだろう。<https://pelikan-kokoroclinic.com/shinjuku/post-3339/

はい、これらをなんとなくまとめると、実行機能です。ある程度レベルの高い認知処理はほとんどがこの実行機能が関わっているといえます。

今日紹介するMWのメカニズムに関する仮説の半分は、この実行機能の関わりについて述べたものです。

Executive failure hypothesis (McVay & Kane, 2009)
まずは直観的な仮説から。これは実行機能 (executive) の「失敗 (failure)」によってMWが生じているという説です。実行機能の主な働きとして、上記の通り、思考や行動を制御するというものがあります。MWは、目標指向的な行動においては邪魔な思考ですよね、ぼんやりしちゃうんだから。それを実行機能が制御して、目の前の仕事に集中するのが通常なんだけど、その制御が失敗しちゃったときにMWが生じるんだ、という仮説です。

Decoupling hypothesis (Smallwood & Schooler, 2006)
これは、MWが生じるのは、今行っている課題への注意を向けているプロセスが、課題から離れて (decouple) 他のものと結びつくために生じると考えられています。この注意を向けているプロセスというのが実行機能なので、この仮説は失敗説と逆で、MWは実行機能が引き起こしていると仮説しています。

Process‑occurrence framework
上記の2仮説は相対するものです。しかも、それぞれの仮説を検証する複数の研究で、それぞれを支持する結果が得られています。
これらの折衷案として、Process-Occurrence frameworkが生まれました。過程 (process) と生起 (occurrence) を分けて考えるもので、失敗説はMWが生起する段階であてはまり、それが継続するのはDecoupling説で説明できる、とするものです。Voss et al. (2018) ではこれを支持するような検証がなされています。

Resource-control account of sustained attention (Thomson et al., 2015)
最後の仮説は、MWはヒトのデフォルト的思考であるというものです。デフォルトなので、基本的に実行機能はそれに関わるような性質があり、目の前の課題へのモチベーションやエフォートが下がったらデフォルト思考であるMWが生じてしまうといいます。これは失敗説と同じ感じですね。

以上、MWに関する4仮説でした!





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