見出し画像

正解

渚を歩いた子どもたちは
遠い光に攫われて
ぼくの名前を知る者は
夕陽の奥に見えなくなった

辞書のページを繰るように
正しい言葉を探してる
人の数だけある道に
答えが見つかりますように

本をひらいた香りに恋をした
あの日の晩夏の思い出は
心ゆさぶる裏おもて
夢を怖れる髑髏しゃれこうべ

君が失ったものに怯えているなら
きっときっと それが正解だ
まだ心のなかに固まってるんだ
君が失った過去と戦っているなら
言葉なんかに負けるな
自分なんかに負けるな

夜道に隠した幼い涙は
淡いブルーの雨に溶けて
ぼくの気持ちを知る者を
暗闇の先に探していた

糸の縫い目をほどくように
間違えた場所を悔やんでも
すべて壊せば解決するほど
汚くもなってないだろう

栞をはさんだ行間に恋をした
あの日の奇跡を忘れないで
哀しみは必ず裏おもて
孤独をかき消す鐘の聲

言葉でも打ち消せない想いが
きっと真実なんだと彼女は言った
まだやり遺したものが疼いてるんだ
僕に狂った正解をくれた彼女は
帰ってきやしないけど
帰ってきやしないけど

答えないで 答えないで
答えた気にならないで

笑わないで 笑わないで
笑えた気にならないで

本をひらいた香りに恋をした
あの日の晩夏の思い出を
型に嵌めたくはなかったんだ
夢に換えたくはなかったんだ

君が失ったものを抱えているなら
きっときっと それが正解だ
ずっとずっと それが正解だ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?