シェア
小清水志織
2021年6月9日 21:51
僕は二枚の招待状を机に並べて凝視していた。午前六時。マーガレットさんが煙のように消えてしまった。彼女の部屋のベッド下やクローゼットのなか、館中のフロアを見て回ったが、結果は徒労に終わった。僕が昨晩のうちに彼女の秘密を訊いておくべきだったと悔やんだ。だが、もはや後の祭りだった。二人の夜の会話を陰でノイ・テーラーに聞かれたのかもしれない。秘密を隠すため、奴はマーガレットさんを亡き者にしたのだと想像
2021年5月30日 20:00
腕が痺れて痛い。美里は血が滲んだ左手をかばいながら、匍匐前進するかのように壁際を移動した。芋虫のような自分の動きにぞっとして、こんな姿を飛鳥に見せられないと思ってしまった。ずりずり体を引き摺った先に、まだ自由が利く右手を伸ばして一枚の招待状を拾った。「今藤はじめ…。彼、何者だったのかしら」今藤は、ブレーカーが落ちてダイニングが真っ暗になったとき、彼と美里との距離は、机二つ分を挟んだほどのわ