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【本纏め】思考・論理・分析 Part1

本投稿では波頭亮さんの思考・論理・分析についてまとめていきます。
論理的思考のバイブルとも言える名著です。ロジカルシンキングなるものを学ぶならばまずはこの本を読むべきだと思います。
本投稿では思考・論理・分析のうち、「思考」部分にスコープを限定して纏めていきます。

1.思考とは

定義
思考対象に関して何らかの意味合いを得るために、頭の中で情報と知識を加工すること。
思考対象に関して何らかの意味合いを得るためのもう一つの重要な行為は情報収集である。これは施行者の頭の外に対して働きかけて、思考の材料となる情報を増大させる行為である。思考と情報収集以外に思考対象に対して合理的に答えをもたらす行為はない。

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思考のメカニズム
頭の中で行っている知識を含む情報の加工とは、端的に言うならば、情報と情報を突き合わせる作業から成り立っている。「突き合わせる」ということは「比べる」ことである・そして施行者は比べることによって何をしているのかというと、「同じ部分」と「違う部分」を見極めているのである。つまり思考する事とはある情報と別の情報とを”突き合わせて比べる” プロセスを通して同じ部分と違う部分の認識を行う事なのである。この「”同じ”と”違う”の認識作業である」というメカニズムこそが頭の中で行われている思考行為の革新なのである。
すなわち思考とは「思考対象に関する情報や知識を突き合わせて比べ、”同じ”か”違う”かの認識を行い、その認識の集積によって思考対象に関する理解や判断をもたらしてくれる意味合いを得る」ことなのである。

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分かるということ
以上で説明した事を言い換えるとこの様になる。何かを理解するということ、すなわち「何かを分かる=判る=解る」とは、その何かを構成する要素の一つ一つについて、試行者が自分自身で保有している知識や情報と突き合わせて比べ、「同じ部分と違う部分に分けつくす事が出来た状態」になることなのだ。コンピューターでいうところの1と0に分けつくされている状態である。

2.分ける為の3要件

正しく分かる=判る=解る ためには正しく分けられなければならない。その為の三要件はディンメンジョンを整えること、適切なクライテリアを設定すること、である。これらの要件を充たして初めて、正しく分けること、ひいては正しく分かる事が可能となる。

2-1.  ディメンジョンの統一
ディメンジョンとは、”抽象水準”、”思考対象・思考要素が属する次元”のことを指す。適切に”分けて比べる”ためには、まず比べようとしている事象が同一抽象水準上、同一次元上に無ければならない。

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2-2.  クライテリアの設定
クライテリアとは、思考対象を分類する場合の切り口、つまり”分類基準”を指す。思考多指症をどういう切り口で分けていくのかの分類基準を設定する事は、そのしこうたいしょうをどの様な構図で分かる=判る=解るのかを決定づける事になる。つまり、「分ける」とはどのようなクライテリアを設定する事かという事と同義であり、適切なクライテリアさえ設定出来れば必然的に思考対象も正しく分けられ、適切な理解や判断を得る事が可能となる。適切なクライテリアとは、思考者に適切な思考成果をもたらしてくれるクライテリアであり、適切な思考成果とは思考者の思考目的を充たす答えである。つまり、正しく分けるという事は、思考目的に合致したクライテリアを設定出来るかと同義である。

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2-3.MECE
Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの頭文字を取った言葉で相互背反、集合網羅が日本語である。意味はある同一次元上の複数の要素に、もれなく、かつ重複なく部分集合化されている事とでる。つまり、もれがなくかつダブリが無いことである。定性的な対象を分類する場合には、数学的論理学的なMECEに拘るのではなく、MECE的であること、つまり以下の3つを充たせば十分であると理解して良いだろう。

① 各部分のディメンジョンが揃っていること
② 各部分集合が基本的に独立した要素であること
③ 各部分集合の挿話が対象範囲の大半をカバーしていること


3.思考のアウトプット

われわれが思考によって何かを解るときは、全てこの二つの思考成果のどちらかか、あるいはこの二つの思考成果の組み合わせによってそれを分かる事が出来ている。

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3-1.事象の識別
考察対象が”それが何であるのか”そして”それがどのようなものであるのか”ということがわかること。つまり事象の識別(属性の理解を含む)である。正しい「識別」を行うという事は”そのものらしさ”を端的に表す違いを認識する事なのである。その為には有効な「比較」が必要となる。つまり”そのものらしさ”を的確に際立たせるためには、「何と比べるか」、「どの切り口で比べるか」の比較が有効でなければならない。そして比較が有効なものであるかどうかは比較対象とクライテリアで決まる。
体系化された分類、つまり構造的に整理されている状態(良い分類)の構成要素の比較が有効である。構造とはある事象の構成要素とそれら構成要素群の位相によって成立されるものであり、体系化された分類とは考察対象となっている事象の構成要素と位相が理解しやすいように明らかにされている状態である。(ピラミッド構造など)

3-2.関係性の把握(事象間の関係)
それとあれとはどのような関係になっているのかがわかること。

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相関関係にある事を知っている事象の一方が変化したことを認知できれば、他方が影響を受けて変化したことを推測出来る。特別な相関関係である因果関係を知っていれば更に有益な推論を行う事が出来る。
つまり、知っている「因果」関係に依拠して人為的に「原因」を発生させて意図的に「結果」を生じさせる事が出来るし、逆に「原因」を消滅させることで「結果」を生起せしめない事も意図的に可能となる。
したがって、ここでは相関関係の中の、因果関係について深堀して記載していく。

3-2-1.因果関係の2つの条件
現実の事象の因果関係はかなり複雑な構造になっているのが常である。結果としてのある一つの事象も、それw引き起こした原因がただ一つだけである場合はまれであり、複数の事象が原因としてヨコ並びに存在しているケースが多い。

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この様にタテ・ヨコに複雑に繋がっている現実の事象群の中で、正しく因果を発見・捕捉する為の「因果の条件」について以下に記載する。
祖二つの事象が影響を及ぼしたり、及ぼされたりする相関関係の認識を第一歩目とし、その上でどちらか一方の事象が必ず他方を生起せしめているという、特定の方向性で影響が発生している場合が因果関係という事になる。独立的に生起し他方に影響を及ぼしている事象が原因、影響を及ぼされている事象が結果という関係である。

相関関係が因果関係であることを見極める為の条件二つについて以下説明する。

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(1)時間的序列
相関関係にある二つの事象のうち、ある一方の事象が必ず先に起こり、それを原因としてもう一方が後から結果として起きるという事である。
但し、二つの事象が互いに他方の原因となっている相互因果と呼ばれる関係もある。所謂、好循環・悪循環といった連鎖的因果関係は相互因果である事が多い。

(2)意味的連動性
経験的に納得して受け入れることが可能な関係性。
例えば、二日酔いの原因を分析する際に「毎回スーツを着用している」「毎回金曜日である」などの原因案が無機的機械的分析だと出てくる可能性があるが、これが二日酔いの原因ではない事は一目瞭然である。この様に二日酔いになったサンプルから帰納的に原因を探ろうとすると関係の無い無限の事象の中に溺れてしまう事がある。ここから救ってくれるのが意味的連動制である。われわれがある事象の原因を探す場合には、毎回必ず起きる事象として特定化しようとする候補を想起する段階で、意味的連動性の観点から既にスクリーニングが行われているのである。
ただ、この条件は結局は経験則的に納得できるかどうかにかかっている。したがって、経験や知識が極端に乏しい分野においては、この条件を吟味する事が大変難しい。

3-2-2.因果補足の3つの留意点

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以上で紹介してきた因果のに条件について、実際には明快な判断が難しい場合は難しくない。その上で、正しく因果関係を捕捉する為の注意点を以下に記載していく。

(1)直接的連動関係
意味的連動性の厳密な検証とも言い換えられる。原因と結果の間の複数の絡み合った原因を一つ一つSo What/Why so?を繰り返す事で飛びが無いようにする必要があるということ。

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(2)第三ファクター
一つの因子Xが異なる二つの事象A、Bの原因になっている場合には事象AとBの間にも相関関係が生じるが、このAとBの間の相関関係を生じさせる共通因子Xの事を指す。この場合、Xという原因があって生起する二つの結果AとBの間の関係は単純な相関関係に過ぎないが、第三ファクターXの存在が見えていないとAとBの関係は単純な相関関係に過ぎないが、第三ファクターXの存在が見えていないとAとBの関係を因果関係と誤認識する事がある。

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(3)因果の強さ
原因が結果に及ぼす原因的影響力の強さを指す。この因果の強さに対する正確な認識が欠如してしまうと、因果律によってさまざまな推論を行う場合に非現実的な結論にたどり着いてしまったり、同じ原因から展開される推論によって結果的には全く異なる結論がもたらされてしまう事になるのである。

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3-3.思考の属人性
思考とは思考者の頭の中で独立に行われる極めて属人的な行為である為に、思考者の保有する知識と性格によって思考のアウトプットとして得られる事象の識別も関係性の把握も、そして識別と関係性を組み合わせたさらに大きな思考テーマ全体についての結論も大きく異なってしまう蓋然性が存在する。この属人性による差異に対応する為に、同じ情報に基づいて思考を行えば同じ結論にたどり着けるような思考のプロセスと思考のルールが「論理」である。

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(1)知識の属人性
思考成果を左右する知識の属人性とは、思考者が思考時点までに経験や学習を通して獲得し、その時点で属人的に保有している知識量の差に起因する。外から与えられた情報を、思考者の知識や経験と照らし合わせて同じ部分と違う部分に仕分け・整理して事象を識別し、関係性を把握する事が思考であるので、この知識の差異によってメッセージや答えは必然的に異なったものになる。

(2)性格の属人性
同じ知識と情報を持ち、同じ識別を実施したとしても、関係性の評価や状況の認識について異なる場合がある。危険/安全、面白い/つまらない、といった価値観や感覚の伴うメッセージには大きく性格の属人性が反映されやすい。また、正確に起因する思考の属人性は、思考者の利害や行動に直接かかわりが強いテーマほど影響が強く表れるのが特徴である。



以上。次回は論理について纏めます!

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