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クッキーと猫

 Webブラウザでcookie(クッキー)が使えなくなるため、代わりの手段が模索されている。
 クッキーはユーザーごとのアクセス制御や消費性向を把握するために利用されるブラウザに記録された情報のこと。
 クッキーの利用によってその人に合わせたネット広告が表示されたりするのだが、クッキー禁止への動きはクッキー利用は個人情報が漏れているのと同じだという見方が広がったためだ。
 クッキー情報を活用したネット広告は便利なものである反面、心の内を勝手に覗かれているようで気持ち悪いと思う人も多いようだ。

 個人個人の情報を沢山集めることによって全体の傾向がつかめるというのはアンケートに象徴される手法で、クッキーもこれと同様の使い方が出来る。しかし、クッキーの場合は知らずのうちに取られる情報だという点と、どんな情報が取られているのか見えないという点で気味悪さを助長しているのだろう。

 「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」というGoogleの経営理念は変わらないまでも、その目論見は今や表立って言いにくいものになってしまった。
 実際、世界各国でのプライバシーに関するGoogleへの風当たりは強く、あちこちで訴訟が提起されている。
 

 私自身は、個人情報そのものにそれほどの価値があるとは思っていない。私個人の情報と私は別物で、その情報を如何に集めたところで私そのものにはなりえない虚像に過ぎない。だから情報によってプライバシーが脅かされているとは感じていない。
 しかし、Youtuberの家特定などで分かるように、ひとたびストーカー行為の標的になると非常に厄介だ。それは普通の個人であっても同様だ。
 実名投稿が主流の海外に比べれば、ネット上では匿名が多い日本はプライバシー感度が高い国ということだろうか。
 
 逆に、匿名での投稿による誹謗中傷が問題になっていることからも分かるように、実名での記述でないと人は必要以上に無責任になり、ある意味で言論の自由が脅かされる。
 言いたいことがあるなら名を名乗れというのは戦国時代の方が実践されていたかもしれない。
 かく言う私も猫の姿を借りた架空の生き物に扮しているのだから何も言えたものではない。

 様々なサービスが無償で利用できるのが現在のネットの有り難さな訳だが、ただより怖いものはないとは真実まことで、ネットのサービスが無料ただな訳が無い。無償に見えるだけだ。
 サービスと引き換えにあなたの個人的な情報を差し出してきたから便利なサービスを受けられたのだ。
 今後ネット上のプライバシー規制が強まることでサービスの低下があってもおかしくない。
 あなたの消費傾向や趣味嗜好がネットの向こうに知られていない場合、ネットで買い物のための検索をするたびに検索結果は的はずれなものになり、購入時には毎回住所氏名やメールアドレスの入力を求められ、毎回クレジットカード番号の入力が求められ、そればかりかショッピングサイトで入力したのと同じお届け先情報を運送会社のサイトで毎回入力しなければならない。
 お買い得情報のメールは届かなくなるし、YouTubeで流れる広告はあなたが全く興味がないものになる。こうした結果、企業の広告効果や販売効率は低下するため、それは最終的には価格に転嫁される。

 こうしたことを考えると、私は今の便利さを捨てられない。つまり私は当面、猫の姿をやめられないということになりそうだ。

おわり

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