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映画『ブレット・トレイン』

 弾丸列車。高速旅客鉄道。
 つまり、日本で言えば新幹線のことだ。
 製作はアメリカ、スペイン、日本で、登場人物に日本人はそう多くはないが、この映画の舞台が「日本」なのは、原作が伊坂幸太郎だからか。小説とは異なり、物語は東京から京都に向かう「新幹線」の中で繰り広げられる。

 この手の映画に出てくる日本が、日本人からしてみればかなりの違和感があるのはいつものこと。ただ、製作や演者に日本人がいるのだからもう少し何とかならなかったのかという思いが邪魔をしてストーリーに没頭できない。せめて救急車とパトカーの音は日本風にして欲しかった(笑)。

 それでも、外国人から見た日本が描かれていいることに違いなく、きっと外国人からみれば、日本に来たことがある人ほど、そうそう日本ってこんなだよね、と共感することばかりなのだろう。
 何で日本人が見て違和感しかない映像が外国人から見ると日本そのものに見えるのか。それは日本に対するステレオタイプというよりも、他の国には無いところがデフォルメされていると考えた方が良い。
 そして、それを見た日本人が抱く違和感は、日本固有の当たり前を改めて良く見てみた方が良いというシグナルでもある。

 さて、日本のイメージの話はさておき、この映画の中身について。
 正直1回見ただけでは何が起きているのか分からないうちに終わってしまったということになりかねないほど展開が早い。それはカット割りの速いシーン(これも昔の日本映画のオマージュかもしれない)があるためなのか。
 休憩している暇がない謎解き的なストーリーに加え、個性的な登場人物のオンパレードに、私達は一体何を見せられているのか、しばしば見失う。
 そう、乗っている新幹線がどこに向かっているのかが気になるし、降りた先で何が待っているのか気になるし、近未来的な設定に見えるけれどそれがどれくらいの未来なのか、あるいはその時代設定が何かを意味しているのかが気になる。
 登場人物の全員が主人公のようでもあり、誰の視点で見るべき話なのかが分からなくなる。
 どこかクエンティン・タランティーノ作品のような風味を醸し出していながらそれでいて軽快で、マニアックというよりもエンターテイメントな作品に仕上がっている。
 とにもかくにも賛否両論ありそうな作品だが、楽しい時間を過ごせたと思うか時間の無駄だったと思うか、あるいはもう一度見ないと分からないと思うか。何をどう捉えるのが正しい映画なのかを考えだしたらつまらない映画であることは確かだ。

 私の勝手な解釈だが、結局のところ主人公はどの登場人物でもなく、新幹線を含めた日本的な全てのものということになるのか。それは日本を観光した外国人が受ける印象に似ているのかもしれない、なんて思ったりもした。

おわり


▼サムネは公式ページより転載しています▼


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