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映画『BlackBerry』

 どんなことにも光と影がある。
 
 技術オタクが作り出した素晴らしい製品も、それを理解して売ってくれる人がいなければ購買者には届かない。届いたとしても時代の後押しが無ければ皆に受け入れられるものではない。
 カナダ発の携帯情報端末の新しさは、キーボードを備え、貧弱な携帯電話回線でもメールのやり取りが出来る革新的な技術的発想の賜物だった。スマートフォン市場で一時は世界第二位となり、アメリカのスマホ利用者の4割近くが使用していたほど爆発的な人気を博していた。
 このスマートフォンの原型となるモデルを開発したのが、ブラックベリー社の創業者で本作の主人公となるマイク・ラザリディスだった。口下手で交渉下手なせいで事業が行き詰まり掛けていた時、幸運にも手を貸してくれる存在に出会った。

 人間万事塞翁が馬という。何がどう転ぶか分からない。ヒットの原因となった技術的な背景が障害の原因にもなり、ヒットの要因となってキーボードはいずれ廃れていく。もちろんiPhoneの登場は大きかったが、BlackBerryが衰退した理由はそれだけでは無かっただろう。
 こうして見ると、機種としては世界を覇しているiPhoneもいつどうなるか誰にも分からないと感じる。新しいモデルが登場してもどうせカメラの機能がアップしただけでしょと見透かされるようになって久しい。新しいデバイスが登場すれば、いつ取って代わられてもおかしくはないはずだ。

 実話に着想を得たというこの映画にはもちろん脚色があるのだろうが、あの時代の熱気と企業が成長する過程を見せるストーリーだけで見せる力があるのは単なる作り物ではないからに違いない。
 恋愛も家族も出てこない。もちろんドンパチといったアクションシーンもない。サクセス・ストーリーとも違う。だから大ヒットという訳にはいかなかっただろうけれど、十分に面白い映画だ。

おわり


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