見出し画像

少子化対策について思ったこと

At risk of stating the obvious, unless something changes to cause the birth rate to exceed the death rate, Japan will eventually cease to exist. This would be a great loss for the world.(Elon Musk, twitter) 

当たり前のことを言うようだが、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ消滅する。それは、世界にとって大きな損失である。(イーロン・マスク、ツイッター、DeepL翻訳)

 そりゃそうだ。生まれるより死ぬほうが多かったら人口が減っていくなんてことは、誰が考えても当たり前だ。
 生物の世界で絶滅危惧種が出来るのも同じ理屈だ。生物の場合は自らコントロール出来ない様々な要因や生態系そのものの成り行きで絶滅危惧種が生まれるが、人間は自らコントロール出来るのにと思ったとしたらそれは人間の思い上がりだ。

 厚労省の定義は次の通りだ。

出生率=$${\text{\(\frac{年間出生数} {10月1日現在日本人人口}\)}*1000}$$
死亡率=$${\text{\(\frac{年間死亡数} {10月1日現在日本人人口}\)}*1000}$$

 政府統計の数字をこの定義で計算すると、日本の死亡率は人口1000人に対して11人、出生率は7人だから、毎年1000人当り4人ずつ減っていく計算になる。全人口は1億2500万人だから、なんと年間50万人も減っているのだ(上記イーロン・マスクのツイートの元になった記事では64万人とある!)。

 出産動向を見るときには上記の出生率ではなく「合計特殊出生率」を用いるようだ。合計特殊出生率とは、「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」だという。つまり、一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当するという。女性人口の年齢構成の違いを除いた「その年の出生率」であり、年次比較、国際比較、地域比較に用いられているのはこちらのようだ。
 これでいくと2020年の日本は1.34だという。2人の人間から少なくとも2人以上が生まれなければ人口は維持出来ない。

 こうして見ると確かに少子化だと思うが、少子化ではなく少母化だという記事もある。つまり、合計特殊出生率の対象としている「15~49歳までの女性」には既婚・未婚の区別は無く、既婚者だけで言えばこの出生率は1.34ではなく1.94だという(おしい!)。
 この差を生んでいるのが女性の生涯未婚率が16.4%と高いことに由来しているという。つまり婚姻数を増やさなければ少子化は解決しないというのだ。
 この記事を書いた荒川氏は、この傾向は何も日本だけではなく世界に及んでいるとする(『イーロン・マスクが日本の少子化を心配したが、やがて世界も日本同様人口減少する』、荒川和久)。

 差し当たり日本での婚姻数減少の理由を私なりに考えてみる。
 なぜ結婚する人が減ったのかについては、様々な要因があるとされていて、良く言われれるのが若者の経済力の低下だ。しかし経済力が無いから結婚出来ないというのは当たらないと思っている。本来無関係なはずの結婚と経済力を天秤に掛けて考える思考法こそが結婚しないことを選ぶ原因ではないか。
 結婚することと結婚しないことを比較検討する考え方もそうだ。
 何でもメリデメで考える癖が浸透し過ぎているのかもしれない。
 もっとも、比較検討した結果、結婚することにメリットを見出したとしたらこうはならないのだから、結局のところメリットを見いだせていないということか。それは何故か。
 結婚した場合のことを想像する時、理屈で色々考えることになると思うが、一番決め手になるのは自分が結婚した時に幸せな生活をイメージ出来るかどうかではないかと思う。それはつまり、結婚生活や家族を持つことについて良いイメージを持っているかどうかだ。そういったイメージは、育った環境に影響されるものではないだろうか。あるいは、不幸な経験に基づく強い希望が良いイメージを育む場合もあるだろう。

 赤の他人が一緒にひとつの家族を造り上げていくことが簡単な訳が無い。経済的に大変なこともあるだろうし、意見が合わない多くの点に折り合いを付けていくことも必要になる。それを妥協や諦めと取るのか、より良い生活のための合理的解決と見るのか。
 生まれた子供を見た時に不安に押し潰されそうになる人もいるだろう。しかし、多くの人はたとえ一瞬だけであったとしても、新しい生命の誕生に、新しい家族の誕生の瞬間に、経験したことのない幸福感を抱くはずだ。
 何ものにも代えがたい経験とはこのことかと思うはずだ。

 身の回りで接する人が増えれば事態は複雑化する。
 でも、生命がこれまで生き延びてこれたのは単純化ではなく複雑化の道を選んで来たからだ。一見困難な道に見える方を選択したことが、遠回りのように思えて実は最適の道だったのだ。
 「迷ったら困難な道を選べ」という格言は、少子化対策にも役立つ考え方かもしれない。
 そもそも迷いすらしない人が増えているのかもしれないが。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?