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映画『AIR/エア』

 ナイキのバスケットシューズ、エアジョーダンの誕生秘話だ。
 今から40年前、ランニングシューズで世界を席巻したナイキは、バスケットシューズのシェアではコンバース、アディダスに大きく水を開けられていた。スタートアップから飛躍的に成長して大きな会社になっていたナイキはやや保守的になっていた。稼ぎ頭はランニングシューズだけで十分で、バスケットシューズの販売促進のために必要以上の大金を投じて選手と契約することは不要だと考えていたのだ。

 契約対象となるルーキー選手を探していたバスケットシューズのマーケティング担当者たちは、限られた予算のせいで、あまり見込みが無さそうな選手たちに声を掛けざるを得ない状況だった。そんな中、マーケティングチームのスカウトマンの独り、ソニー・ヴァッカロが間違いなく逸材と目につけたのがマイケル・ジョーダンだった。

 このシューズが開発されなかったら、マイケル・ジョーダンは10回もの得点王に輝くプロ選手にならなかったかも知れない。そう考えると、あの時のソニーの目利きと情熱が世界に与えたインパクトは計り知れないと言えるだろう。

 この映画は実話に基づいているものの実話とは違う部分もあるとソニー本人は言っている。しかし、ソニー自身にとってこの映画の視聴体験は人生で1番感動したとも語っている。映画的な演出がされた感動的な物語になっているが、現実にはもっとドロドロした部分があったのだろう。実務は映画のように華やかではないのが世の常だ。
 それでも、ジョーダンを獲得しようと動いた当時のソニーの情熱が、マイケルやその両親の心を動かした事実には変わりない。感動的な物語をより感動的に描くことで、映画を見た観客が心を動かされるのだ。

 ソニーを演じる主演のマット・デイモンと、この映画の監督でもありナイキCEOのフィルを演じたベン・アフレックだけでなく、登場する俳優陣の素晴らしい演技も物語を引き立てている。
 ところで、マイケル・ジョーダンの役は誰が演じたか。それはあまり重要ではない。バスケットの世界ではスーパースターになったマイケルだが、この映画では脇役だ。なぜなら、この映画はまだエアジョーダンが生まれる前の話だからなのだ。

おわり


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