Netflixドラマ『トラベラーズ』

　もし未来の使者がやって来て人類を滅亡から救ってくれたとしたら。
　そんな設定のドラマだ。

　未来からやってくる人々は自らをトラベラーと呼ぶ。

　トラベラーがやって来る舞台となるのは現代だ。現代から見た未来の行く末を微妙に修正することが彼らの使命であるから、現代に生きる人々にとっては何かが変わる訳では無い。
　逆にトラベラー視点で言えば自分たちの現在を変えるために過去にやって来ていることになる。つまり過去を変えることで今を変えることが出来ると信じていることになる。

　あの時にもう一つの方の選択をしていれば、と思うような過去の分岐点が誰にでもひとつはあるだろう。過去を変えれば今が変わり、未来が変わる。何か不運なことに遭遇した時、あそこで別の道を進んでいればもっと良い人生が待っていたはず、と思いたくなるものだ。

　未来から来たトラベラーの資金源はギャンブルや投資だ。次にどの馬が勝つか、どの企業が成功するか分かっているのだから、そこに投じれば良い。Amazonが創業した時に戻って創業者に出資していれば、今頃私だってビリオネアだ。もっとも、トラベラーの目的は未来の人類を救うことであって、決して私利私欲の為ではない。だから、金持ちになったり世界を支配しようということでは無いはずだ。

　２０１６年にシーズンⅠが放映されたカナダのテレビドラマがベースで、シーズンⅢはNetflixのみで継続された。どんな人気シリーズもシーズンを重ねると方向性を見失うのは同じ。未来と過去を繋ぐこのドラマにおいては、過去を変えると未来が変わるという事実が、実際のタイムラインにどういう影響を与えるのか見失いがちだ。タイムラインを維持するためのプロトコルがあるのに、複数のタイムラインが描かれるという混乱に陥った制作側は、視聴者に回答を提示する前に、自らパズルを解く機会を失ってしまった。
　

　私の場合、考えれば考えるほどに人生は後悔が多いと思う。振り返って修正したい箇所は沢山ある。今が不幸かと言うと決してそんなことは無いが、もしあの時、という思いは拭いきれない。過去の自分に忠告したいことも沢山ある。でもそうしたことは全て自分事だ。トラベラーのように自らの命を顧みずに人類に捧げるのとは違う。過去を変えられたらなぁと個人的な感覚で考えることと、トラベラーが目指すものは全く違う。
　それだけ人類の未来は申告だということだ。

　ともすると、今の人類も道を誤れば将来にトラベラーを過去に向けて派遣しなければならなくなる。そうならない為にも、後悔しない生き方をしたいものだ。そしてもし出来るならば、自分のことだけでなく、人類の幸せに貢献出来る何かを為すことを目指したいものだ。

おわり