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若さ漲る

 若さとはこういうことか。
 まずバネが違う。歩いているだけでその軽快さに見惚みとれる。走ればなおさらだ。息が上がる事もなければ疲れた素振りも見せない。
 尽きることのない好奇心に、少々のことではくじけない心。しつこいくらいな執着と根気と集中力。
 変化に適応して慣れるのも早い。そして喜怒哀楽が豊か。

 身体の柔らかさは持って生まれたものだろう。しかもしなやかな強さを兼ね備えている。
 目に宿る生気、跳躍力、瞬発力のどれをとっても申し分ない。
 駄目だと言っても繰り返すしつこさ、興味津々の眼差し、足元へまとわりつくような追従。
 どれをとっても若さがにじみ出ている。年寄との同居で忘れていたが、これが若さなのだ。

 これは最近我が家で同居するようになった彼のことだ。彼は立派な大人とはいえまだ2歳になったばかり。だから若さがみなぎっている。
 毛のつやも良い。遊ぶことに一生懸命だ。そしていたずらを忘れない。
 そんなにしつこいと普通は嫌われるところだが、彼の場合は少し違う。嫌われるどころか好かれてしまう。何故なら彼は猫だからだ。

 新しい猫との同居は戸惑いも多かったが、それは彼の方も同じ様子で、数週間が経ってようやくリラックス出来るようになってきたようだ。最初は食事も水も摂らずトイレにも行かなかったから、かなり緊張していたのだろう。
 緊張感は受け入れる側の猫も同じで、どこか落ち着かない様子が続いていた。

 人間サイドもどう対処するのか良いか悩みながらの対応で、それはトイレの数や位置、食事を与える場所からして人間様の思い通りにはいかない。増設したトイレを二匹が共用してしまい以前からあったトイレが放置されていたが、最近は二匹が2つのトイレを利用するようになった。
 食事はまだお互いに離れた場所でないと駄目で、新猫の警戒心がやや強い。

 最初新猫は遠巻きに見ることすらせずに隠れてしまっていたが、二匹の距離感は日を追うごとに縮まり、今ではそれぞれ半径数十センチのパーソナルスペースが見て取れるようになった。

 新猫が動き回るにつれて顕著になってきたのが若さである。若いってこういうことかと思わせられるのはそんなときで、若さを忘れていた事に気付かされた。きっとそれは人間も同じで、いつまでも若いと思っている自分の中の虚像とその実像は掛け離れていっているはずだ。
 ズレが大きくならないうちに修正しておかないと。
 
おわり

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