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手作りサウナ <極北カナダ・ユーコン>

北米の極北では、あまりサウナの議論は交わされることが少ない。サウナといえば、北欧やロシアといった旧大陸の寒冷地が有名だ。現在僕が住むカナダ極北・ユーコン準州でも、サウナの文化はあまり浸透していない。スウェットロッジと言われる、先住民族の伝統をたまに耳にすることはあるが、元々は極地にあった文化ではないだろう。

それでもアラスカの一部で、サウナの伝統が少しばかり残っているらしい。アメリカ合衆国が買い取る前のアラスカでは、ロシア帝国の一部であったこともあり、ロシアのサウナ文化が当時のアラスカに入ってきたらしい。だがこの文化も内陸のカナダまでは入ってこず、カナダのユーコン準州では、一部の愛好家しかサウナを持っていないのが現状だ。


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(僕と妻が作った手作りサウナ)

個人的にはあるここ数年ずっとサウナが欲しいと思っていた。直接の動機はと言うと、我が家であるゲル(ユルトとも言う、モンゴルの遊牧民が暮らす丸いテントの移動式の家)にはシャワーがないためだ。ゲルで暮らす生活も今年で9年目となるが、いつもシャワーが欲しいと思ってきた。普段シャワーはダウンタウンで借りているオフィスで浴びるのだが、ゲルでさっと浴びれるシャワーと同時に、健康にも良いサウナがずっと欲しかったのだ。それでも建設に踏み切る時間がなく、コロナ渦で観光業が停止した2020年の夏、遂に念願のサウナを建設することにした。

そこで取りかかったサウナ作りだが、予算の関係もあり、全て自分たちで設計士、手作りで行うことにした。まずは材料集めだが、なるべく新品のものは買い揃えたくはない。必要でなくなった窓やドアは、少し時間をかけると見つかることが多い。サウナ作りを考えてしばらく経った後、隣人が余った木材と窓、そして古いアパートのドアを安く譲ってくれることになった。

素人なりのデザインではあるが、およその大きさと高さを決め、そこから必要な木材の量を計算し、足りない材料は近くのお店に買いにいった。去年はコロナ渦の影響で、様々な人がDIYに取り組んだため、カナダ全土で木材不足が起きてしまった。幸い僕たちが資材を買ったのは、今年のように資材の値段が2倍以上に跳ね上がる前の話である。

(サウナの建設様子と外観の動画)

集めた建設資材を使い、工事を始めたのが雪が溶け切る5月の中旬だった。まずはコンクリートのブロックで基礎を作り、その上に床と壁と屋根を2x4方式で作っていった。日本の在来工法とは違い、素人でもある程度簡単にできてしまうのが2x4方式の良いところだ。間違えても多少の修正も可能である。

極北カナダのユーコン準州の冬は、マイナス30度以下まで気温が下がるため、断熱材もしっかりといれておく必要がある。断熱材の上には、高熱のサウナによる火事を防ぐため、アルミフォイルのようなシートを部屋一面に貼り付けた。(その姿はまるでロケットの内部のよう。)そして内装の最後に取り付けるのが、杉板である。

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(2020年の春に作り始めたサウナ)

杉板は香りがよく、サウナに入っていると香りだけでも癒されてくる。ホームセンターで買った杉板を張り、肌が接触する部分には、木の節が無いクリアーシーダーというものを利用した。節があると、高温で熱した時に樹木が節から出てくる可能性があり、火傷する恐れがある為だ。クリアーシーダーはかなり高額で、容量の割には一番お金をかけた部分でもあった。また座るベンチは折りたたみ式のものをデザインし、サウナとして使わない時は小さな小屋として使えるように工夫も凝らした。

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(サウナのベンチ作り風景)

床を張り、以前ゲルで使っていた古い小さな薪ストーブを取り付けると、サウナの内部が完成した。サウナの外部分も廃材を多く使い、極北の古い小屋のようなスタイルで仕上げた。何年も前の古い杉の屋根材、取り壊されるフェンス板、いらなくなった金属の屋根材などを使い、外壁を雨から守る為にリサイクルされた廃材を取り付けたのである。

そしてドアは隣人から安く売ってもらった古いアパートのドア(3枚のガラス入り)を使ったのだが、サウナのドアとして使うには大きすぎるので、ドアの3分の1を切り取って、小さなドア部分を細長い窓として使うことにした。こうして出来上がったのが、ユーコン式の手作りサウナだ。

(サウナの紹介と実際に使う動画)

秋に完成して以来、10日に1度の割合で使っているが、作って本当によかったと思う。内部は冬でも80度前後まで室温が上がり、十分に汗をかくことができる。また凍らない季節の夏限定ではあるが、ポータブルシャワーを使うこともでき、冬は外に積もった雪に飛び込んで体を洗うこともできる。

サウナを使う最大の利点は、肌がツルツルとなり、その日の睡眠の質がぐんと上がることだろう。サウナ後に眠った翌朝は、前日の疲れがすっきりとれていることが多い。

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(ハロウィーン前に完成したサウナ)

今は雪解けが進む4月で、5月になるとようやく水回りが凍らない季節となるため、ホポータブルシャワーを取り付けることできる。今年はシャワールームを付け足そうかなと思っているところだ。真冬に外で浴びるポリタンク式シャワーは使い勝手が悪く、雪で足を滑らすことが何度かあった。屋根のあるシャワールームがサウナに併設されていれば、もっと快適に使えるようになるはずだ。

今年の夏も、サウナを存分に楽しみたいと思う。コロナ渦でカナダ国内の移動制限されている今、家にいる時間の一部をサウナと焚き火で楽しむ予定だ。

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