⑧ 5個目=演繹的論理を強くする

最も深く思考に関わっていくものは3つのもののうちの「『まとめ』の抽象度を変える」ことについてその意義を考えていきます。これは「演繹的論理」を強める基本となる考え方となります。

『ぼくのお父さん』の「まとめ」と「むすび」の演繹的な関係性は以下のとおりです。

「まとめ」毎日毎日とてもよく働きます。
「むすび」僕も大きくなったらお父さんのようになりたいです。

この「むすび」で示された「お父さんのようになりたい」という主張は、果たして「お父さんはよく働く」という考察からのみ導かれるものでしょうか。
「よく働く=働き者」という概念をより抽象化していくのなら、それは「立派な大人・手本とすべき大人」ということなるでしょう。お父さんは「立派な・手本とすべき」大人像の「働き者」という側面を備えているから「お父さんのようになりたい」と主張を展開したことになります。

よって抽象度を基にして「まとめ」を変えていくと、「お父さんはよく働く」という考察は「小まとめ」(抽象度が低いもの)となり「お父さんは立派な・手本とすべき大人」という考察が「大まとめ」(抽象度が高いもの=抽象度が低いものはこの中に含まれる)とカテゴライズすることができます。
つまり、以下のような構成となるでしょう。

「小まとめ」毎日毎日とてもよく働きます。
「大まとめ」お父さんは立派な・手本とすべき大人です。
*省略して語られているものとなります。
「むすび」僕も大きくなったらお父さんのように立派な大人になりたいです。

このように「まとめ」の抽象度を考えていくと、「大まとめ」の含まれる「小まとめ」はひとつではないことがわかります。つまり「立派な・手本とすべき大人」の含まれる「小まとめ」は複数あることになります。
この「小まとめ」を複数位置づけていくことによって、「むすび」はより強くなり説得力が増していくことになります。これを「論理を束にする」と言います。

本マガジンの記事⑥で帰納的に強めた『ぼくのお父さん』に対して、さらに「小まとめ(小おわり)」として「お父さんはとてもやさしいです」という考察を加えたものが以下になります。
*加えたところを強調文字としました。

「な か」①昨日は遠くまででかけたので帰ってきたのは夜遅くでした。
「な か」②今日は荷物の積み込みがあるので朝早く出かけました。
「な か」③明日はいろいろな所へ行くので泊りとなり帰ってきません。
「な か」④先月は土日も仕事に行って3日しか休みがありませんでした。
「な か」⑤たまの休みは家の壊れたところや車の修理などをしています。
小おわり1」毎日毎日とてもよく働きます。
「な か」1⃣たまの休みは疲れているのにぼくと遊んでくれます。
「な か」2⃣泊りの時はいつもおみやげを買ってきてくれます。
「小おわり2」お父さんはとてもやさしいです。
(「大おわり」お父さんは立派な・手本とすべき大人です。)

(「むすび」ぼくも大きくなったらお父さんのような大人になりたいです。)

「むすび」で意見や主張を表明するのですから、その説得力を高めていくには「より多くの」「より多様な」根拠(「まとめ」)が必要となります。
『ぼくのお父さん』の表現で言えば、「むすび」で「お父さんのようになりたい」と主張するのであれば、その主張を支える「多くの」「多様な」根拠(「まとめ」)が必要になります。

以下に示すマガジン『論理的思考力・表現力をどう育成するか④(理論編:論理内容)』の記事①の動画「論理とは何か」の説明で言えば、「お父さん」のプラス面となりうる色を複数「まとめ」に位置づけていくということになります。

① 動画「論理とは何か」|小次郎|note


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