⑮ 他7個で指導すべきこと(8個目について)

8個目は、「『なか』の厚み・詳しさ」を工夫するということです。これは、記事⑰で示す9個目の「構成要素の位置の工夫」とともに、今まで述べてきたことに加えてさらに説得力を増すための工夫であると言えるでしょう。

今までの「なか」の工夫は、その内容については言及してきませんでした。数や質、その配列の在り方について述べてきましたが、それぞれの「なか」は同列に考えてきたということになります。
同列に考えるということは、その内容も同じように表現していくということが原則となることになります。しかし、果たしてそうでしょうか。

例えば基本文として示した『ぼくのお父さん』の二つの「なか」は以下の通りです。

「な か」①昨日は遠くまででかけたので帰ってきたのは夜遅くでした。
「な か」②今日は荷物の積み込みがあるので朝早く出かけました。

仮に、この表現を伝えたい相手が6年生であり、社会科の時間で全国の地理を学習済みであるとします。そうなれば、「なか」①では具体的な地名として「青森」とだけ示せば、相手には、いかに遠くて時間がかかるのかということ、つまり夜遅く帰ってきた必然性を理解させることができます。なぜなら、青森の場所や距離をすでに理解しているからです。
これに対して「なか」②では、「どのような荷物が」「どのくらいの量」あるのか等について詳細に記さなければ、相手には、いかに積み込み作業が大変であるかという朝早く出かける必然性を理解させることはできません。

「なか」は「まとめ(おわり)」の根拠となる具体的な事実を述べる要素でありますが、このように相手の立場に立ってその粗密(表現の厚み)を考えていかなければなりません。
「相手の知っていることは簡潔に」「相手の知らないことは詳しく」表現することが原則となるのです。









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