「ショウショ―トウヒコウ」
#Twitter300字ss お題「あう」
どうしても会いたくて堪らない衝動が体の端から端まで駆け巡って、土曜午前七時の電車に飛び乗った。
さて、何に会いたいのだったか。
車内は平日と違って乗客も疎らだ。湿度はさして変わらないのだろうが、至近距離に他人がいないだけ落ち着ける。
灰色の雨粒が窓を叩く風景を目で追う。通勤中は大抵スマホを見ているので新鮮だ。子供の頃はよく靴を脱いで座席に膝立ちになって、夢中で眺めていた。夏休みに祖母の家に行くため乗ったのだ。
思い出していると、雨空に一筋の光が射した。雲の切れ目は見る見る間に広がっていって、脅迫的に濃い晴れ空が覗いて。
分かった。
私はあの眩しい青に会いたかったのだ。
梅雨明けはもうすぐそこまで来ている。
(小暑/少々)
(299字)
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