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「その時私は選び取ったのだと」

#Twitter300字ss  お題「選ぶ」


「グランプリは…七番!」
 呼ばれた途端また落ちたのだという実感がのしかかって、番号の後の名前も聞こえなかった。
 七番の子が取材される頃、私達は控室に戻される。最初からいないかの様に。呆然とする子、冷静を装う子。今日は泣き崩れる子がいない分平穏なのかも。
 貴女は選ばれた子よ。
 そう言って下さった先生にまた恩返しができなかった。申し訳なくて取り乱しそうになる。
 だから、荷物を纏める手に窓から光が射した時は幻を見たのかと思った。
 天使が飛んでいる。
 いや、外で落ち葉か何かが舞っていて影を作っているのだろう。それは分かっている。だが確かに、手の中できらきらと羽ばたいていた。
 もう一度やってみよう。
 私は拳を固く握った。


(300字)


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