「写真部事件未満」
#Twitter300字ss お題「鍵」
部室の鍵を開けると室内は闇に包まれているのに、中から人の視線を確かに感じた。
幽霊でもいるのだろうか、それとも不審者か。後者の方が怖い。
意を決して室内に足を踏み入れると、年端もいかない少年がこちらを向いていた。
胸がどきりとした。
直後ぱち、と音がして、電気が点く。部長が入ってくるところだった。
「何やってるんだ、真っ暗な中で」
「そこに誰かいたから」
彼は訝しげに私の背後を見遣った。壁には一葉の写真が貼り付けられている。
「ああ、昔父に撮って貰ったのを昨日現像してみた」
部長は心なしか照れ臭そうだ。
どうりで、格好良いと思った。
年下が趣味だと誤解されそうなので黙っておくことにした。
そんな扉を開けた覚えはない。
(300字)
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