「スクリーンのあの子を」
谷水春声さんには「恋って偉大だ」で始まり、「少しだけ待っていて」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以上でお願いします。
#shindanmaker #書き出しと終わり
恋って偉大だ。
伏せられた睫毛が綺麗な曲線を描いている。ちょっとだけ突き出した唇は仄かな、主張しすぎない紅色に染まっている。
「今から告白してくる」
あの子は、この瞬間が一番美しいであろう顔で言った。恋が叶ったり破れたりしてからはもう訪れることのない瞬間。
そこまで来たところで私は、もう何度も見た映像を切った。射影機のからからという音が段々と緩慢になって、遂には止まる。
この告白の結果がどうなったか知らない。結果と言えるものがあの子に訪れたのかも。映画やドラマの一幕なのか、ドキュメンタリーなのか。それすらも分かっていない。
瓦礫の中からフィルムを掘り起こして修復した。
久しぶりに見つけた人間のいた証拠だったから、食い入るように見続けてしまった。
いや。
この状況もそろそろ終えられるだろう。映像鑑賞にかなりの時間を費やしてしまったとは言え、私以外の人間の行動サンプルは取れた。
私は傍らに置いた水槽の、培養液に浸かった塊に呟く。
もう少しだけ待っていて。
(420字)
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