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「嗜好停止」

谷水春声さんには「ぱちりと目が合った」で始まり、「ずっと子供でいたかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以上でお願いします。
#書き出しと終わり  
https://shindanmaker.com/801664

(※百合要素を含む)


 ぱちりと目が合った。
 それは先生がHRに風紀の乱れを指摘した直後で、わざわざ一番前の席から意味ありげに私を見るので気が気ではなかった。
「先生が言ったの私たちの事かもね、この前の帰り道の…」
「それで振り向いたの?」
 昼休みである。
 私たちは人の来ない、屋上へ繋がる階段に腰掛けていた。
「ばれたらどうするの」
「大丈夫」
 あなたは窓の外を向いた私の視線を遮るように立ち塞がった。そうして大きな瞳を自信ありげに見開いたまま、距離を縮めてくる。
「証明してもいい。私たちが今キスしても、それ以上の事をしても誰にもばれない」
 そう言われるとそんな気もしてきた。
 気圧されて目を閉じてしまう。あなたの背後、窓の外のペンキで塗り潰したような空の青が最後に見た色で。
 何だか泣きそうになる。
 同じ色のランドセルを背負っていた頃から恋をしていた。男子よりも速く走るあなたをずっと見ていた。
 髪を伸ばした今のあなたも多分好きだから、ここまでしているけれど。
 私はずっと子どもでいたかった。


(420字)

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