人が変わるためには時間がかかる



立教大学の中原先生のブログにとても共感しました。

ひとが変わるためには、時間がかかる。
であれば、組織が変わるためにはさらに時間がかかるのは当然です。


ついつい組織を自分の思う良い方へ良い方へと向けようとする時、ふと気がつくと、そのひとの行動ががらっと変わったり、そのひとの性格や考え方が変わったりすることを期待している自分がいる。


でも、これは経験から考えると、ひとの行動はすぐには変わらないし、ましてや長年培ってきた性格や考え方はまず変わらないと思った方が良いと感じています。


僕自身は、トップダウン的なやり方が自分の性に合わず、なんとか職員との対話を通じて、職員の意思や希望をもとにボトムアップ的に組織を良い方向へ導くことを目指して奮闘している毎日です。

ところが、この『対話』というのが難しい。
雑談とも違うし、会議とも違うし、討論とも違う。

埼玉大学大学院 准教授の宇田川さんは

対話とは、相手との間に接点を持って自ら枠組を変えていくということ
気鋭の経営学者・宇田川准教授に学ぶvol.1 『組織をつくる「対話」の力とは?』リクルートマネジメントソリューションズ コラムより 2018

だと、上記のコラムの対談の中で述べています。

この宇田川さんのお話は、ほんのちょっぴり聞きかじっただけなので、勉強不足感が否めないので恐る恐る書きますが、ポイントは「自ら枠組みを変えていく」ことにあると感じます。

話を保育の世界に絞って考えていきます。

これまで養成校での学びや自主的な学びを通して蓄積された今ある自分の保育に関する考え方、そして生きていく中で様々な事象や人との出会いによって培われてきたその人らしさは、言い換えればその人の持つ思考や信念の枠組みとも言えます。


保育者はこの枠組みに基づいて保育を組み立てていきます。
むしろその枠組みより外のことは「知らない世界」であり、枠組みを超えた行為や知識については認識できないし、ましてや保育に生かすことなどできません。
宇田川さんも述べているように"我々は何かしらの「枠」の中に入った状態でしか、物事を見ることができ”ないからです。

対話というのは、あるテーマについて、こうしたそれぞれの持つ枠組みをもとにお互いの価値観や考え方を、話し合い、聞き合う行為なのではないでしょうか。


さらに、お互いを形作る枠組みは、その人にとって、自分自身の生き様でもあり、物事を考えるときの軸でもあり、譲りがたい価値観でもあります。
そういったデリケートな内容であるがゆえに、この人なら話せそうだぞ、という信頼関係が基盤として、そこになければなりません。

つまりお互いの価値観や考え方は話したり聞いたりするためには、その両者ないしは複数名の間にある程度の信頼関係が必要です。

信頼関係の定義や度合いについては、僕の頭では適切に示せないので、ここでは「この人になら自分の心の中にある本音を話してもいいかな」と思えるくらいの関係、とぼんやり示しておきます。


こうした信頼関係のある相手との対話が成り立った時に初めて、自分の枠組みの外に別の世界があることを知る(というより意識する?)ことになります。
それは両者の思想の違いを明確に知ることでもあり、その違いを受け入れることができれば、枠組みを広げることにも繋がるはずです。

しかし、ここで気をつけなければいけないのは、枠組みを広げるかどうかは、強制されることがあってはならないということです。

相手との価値観や考え方を伝え合う相互のやりとりを通して、自分なりに気づきを得たり、あるテーマへの見方・考え方が変わったりすること=自分の持つ枠組みを広げることであり、それこそ対話による変容なのではないか?と僕は思いました。


以上のことを踏まえて、宇多川さんの定義に当てはめて再度考えてみると、

対話とは
『(相互に信頼できる)相手との間に、(お互いの価値観や考え方を伝え合うという)接点を持って、(新しい気づきを得たり、見方・考え方が変わったりすることで)自ら枠組みを変えていくこと』

なのではないでしょうか。


そう考えると、相手と対話をする時に今の自分は

「こう変わって欲しい!」と強く思いながら関わっていることに気付かされました。

変化を強く望む対話は、もしかすると対話ではなく、極端に言えば、説得や洗脳なのではないか?と少し怖くもなりました。


相手に大きな変化や、急激な価値観の変容を求めながら対話をしようとした時(それは厳密に言えばもう対話ではないのですが)、そこにはストレス、不快感が生まれ、それらが拒絶や無視といった行動に繋がっていくのでしょう。

でも、当のズレた対話を仕掛けた張本人は「おいおい対話的な態度で関わってやったのに何にも変わんねえじゃねえか!」と自分の犯した過ちには気づかず、ふんぞり返っているのでしょう。

そんなふうに考えると、冒頭の中原先生の人が変わるためには時間がかかるという言葉により深く頷けるような気がするのです。


変わってもらいたいという思いを持って関わるのではなく、あくまでも自分の価値観、考え方を相手に伝え、相手の価値観、考え方を聞こうとする。

これが、人が変わる、そして組織が変わるためには必要なことなのかもしれません。



中原先生のブログから刺激を受け、宇田川先生のお話に強く共感して勢いで書いてみました。

分かっちゃいるけど、いざ対話を実践するとなると、これが難しい。
悩みは尽きず。

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