「お前の母ちゃんでべそ」と言われて怒るべきか
怒るべきでない。まずは「ラベル貼り」の話からしよう。
「ラベル貼り」は下手をするとハラスメントになる。「ラベル貼り」というのは、「あなたは優しい人」などの枠に当てはめて取り扱う事を指すと定義する。
例えば仕事で、部下に「何か脳の異常がないか診てもらってこい」というとハラスメントになる可能性がある。確かに言われた本人は嫌な気分になるかもしれない。
だが、待て。
それをハラスメント扱いするという事は、「脳に異常のある人」を見下している事になる。
わかる、本意ではないはずだ。この世は競争社会。「使えない」と言われたら自尊心が傷つく。だが、それと同時に隣人を慈しむ心も持ち合わせているのが人間だ。いわば、競争と慈愛の中間管理職が僕達だ。
話を進める。「悪口」も「ラベル貼り」に相当する。
「お前の母ちゃんでべそ!」っていう悪口は、「母ちゃんがでべその人」というラベルを貼っている事になる。また、「お前の母ちゃんでべそ」と言われて怒る人は、「母ちゃんがでべその人」を見下している。
言っている方に悪意がある事は言わずもがな、言われて不快な気持ちになっている方にも無意識の悪意がありそうだ。
よし、この問題について対策しよう。
対策方法としては以下の3つしかない。
・「悪口(ハラスメント)を言わせない」
これは無理だ。自分一人の力では、世界どころか相手一人として変える事はできない。なのでこれは無視する。
・「悪口(ハラスメント)を言わない」
これも無理だ。相手の主観に依存するためだ。例えば、「お前金持ちだな」というラベルを貼ったとき、相手が貧乏人である事にプライドを持っていたとしたら悪口になる。
「いやいや、ラベル貼らなきゃいいでしょ」というかもしれないが、これも至難の業だ。八百屋さんも「毎度あり!」と言って「毎度来る人」というラベルを客に貼っている。そう考えるとラベルを貼らないなんて神業だ。
・「悪口(ハラスメント)ととらえない」
これは自分の問題なのでできそうだ。悪口ととらえないためにはもう、どんな事でも真剣に会話にしてしまえばよいだろう。
「お前のかあちゃんでべそ!」
「個人情報なのでお答えできません」
といった具合か。
こういう受け答えをしていると、
「こいつ話つうじねぇな」というラベルをまた貼ってくるかもしれない。でもまた真面目に会話すればよい。
なんてったって僕達は競争と慈愛の中間管理職なんだから。