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広告だらけの令和の日常、昭和に予言! ~私たちは星新一SF世界を生きている~

 おすすめスイーツを調べていたら、脂肪吸引の広告が!
(よけいなお世話だ!)

 エクセルの操作方法を調べていたら、エロ漫画の広告が!
(エロに目を奪われて、必要な情報入ってこない!)

 無料動画で仕事疲れを癒していたら、
「ラクしてネットで稼ご!」みたいな広告が!!
(……なんかむなしくなるわ!!)

◇◇◇

 無料アプリ、インターネットサイト、無料動画にもれなくついてくる、たくさんの広告。いまや、広告を消すためにお金を払うという、なんだかよくわからない事態になっています……。

 そんな未来の状況を、いまからおよそ40年ほど前、予言していた人物がいます。SF作家の星新一さんです。

 「盗賊会社」という本に収録されていた、「無料の電話機」というショートショート作品に、皮肉っぽく描かれています。

◇◇◇

 貸した金を返してほしい、主人公のエヌ氏。しかし、借金の取り立て電話で、通話料がかかるのはもったいない。そこでエヌ氏は、広告社からもらった「無料の電話機」で、返済の電話をかけることにしました。

その時、受話器のなかに、エヌ氏のでも相手のでもない、第三の声が流れた。若い女性の魅力的な声だ。
〈この電話は、バブ広告社が一切の料金を負担し、無料でございます。ごゆっくりと通話をお楽しみ下さい。しかし、そのかわり、途中でコマーシャルを入れさせていただきます〉
(中略)
「おい、貸した金はどうしてくれるのだ。約束の期日は、とっくに過ぎているのだぞ。あんなにかたく約束したではないか」
「……」
「おい、なんとか言ったらどうだ。聞いているのか。聞こえているのか」 エヌ氏はもっとしゃべり続けていたかったのだが、中断せざるをえなかった。コマーシャルがはじまったのだ。
〈補聴器でしたら、品質の優秀さを誇る青光電機の製品をどうぞ。低音から高音まで、忠実に増幅する超小型の……〉

 無料の代償として、会話がコマーシャルに邪魔される様子が、ブラックユーモア的に描かれています。

◇◇◇

 この作品、昭和60年に刊行されたんだそうです。インターネットもスマートフォンも存在しませんでした。昭和の感覚では、クスッと笑える作品だったのかもしれません。

 しかし、令和の感覚ではこれ、「あるあるネタ」ではないでしょうか。「無料が欲しけりゃ、広告を見ろ。おまえの時間をさしだすなら、タダにしてやるよ」みたいな。少なくとも、私にとっては「こういうの日常茶飯事だなあ」とため息をつきたくなるような読了感でした。

 無料ゲームアプリでは、広告に中断させられる。無料動画を見ようとすれば、見たくもない広告を見なくてはならない。無料のネット記事を読もうとすれば、広告が邪魔でしかたがない。まさにエヌ氏。いつのまにか、私はエヌ氏になっていたのです。なんということでしょう。

 いずれ、VRゴーグルで見させられる、立体映像の広告も登場するのかもしれませんね(笑)

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