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もう一つの『香水』

いつの世も時代を彩る音楽。
2020年も、Niziuの『Make you happy』、LiSAの『炎』、YOASOBIの『夜に駆ける』など、たくさんの名曲を耳にした。

中でも、瑛人の『香水』は、親しみやすいメロディーと令和らしい設定で多くの人気を獲得した。

しかし、『香水』という名の名曲が他にも存在することを私は知っている。

他でもない、2003年にリリースされた、メロン記念日の『香水』である。

メロン記念日とは、老舗アイドルグループ集団・ハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ。)に所属していた4人組アイドルユニット。

数々の曲を残したが、とりわけ『香水』は、ハロプロらしいリズムが特徴の、今なお歌い継がれる名曲である。

今回はハロヲタ歴6年目の私が、この曲の歌詞考察(というより私の心の中の突っ込み)をしていこうと思う。

※以下、ネタバレを含みます。
※便宜上言い切りの表現になりますが、一個人の勝手気ままな見解である旨ご了承下さい。
※主語を「女の子」や「女性」とする表現がある旨ご留意下さい。




(Aメロ)
抱きしめられたその次の朝思う
(抱きしめられた次の日の朝って思うこと人それぞれある。女の子にとってはきっとデリケートで繊細で愛おしいような時間だ。)

「片想いだとわかってるのにでも会ってしまう」と
(ここで少し驚きが入る。前日に抱きしめれているのにも関わらず、片想いなのだ。エッ、どういう関係?と、そもそもハッピー満開の歌ではないことを察してしまう。)

それでもいつの日か幸せな日が来たり…
(「幸せ」という言葉はそれなりに重い言葉だと思う。日常で、それも恋愛の人間関係ではあまり頻繁に使わないのではないだろうか。それを敢えて使うことで伝わってくる強く儚い願い。主人公はきっと、一時的な幸せを感じる瞬間はあっても現状を幸せだとは思っていないのかなと想像できる。常に不安と満たされない気持ちでいっぱいなのか。)

あなたが私を頼りにしたり…
(自分が頼りたいのでも甘えたいのでもなく、相手に頼られたい。これは女性なら言いたいことが何となく分かるのではないだろうか。頼られることによる幸せって、本当に好きな人じゃないとなかなか感じられない気がする。)

そんな日が来ると思ったり
(うまく言えないけどこの辺の言い回しにすごく女の子を感じる。)

(Bメロ)
電話が来るの100万日とか待ってる感じ…
(100万日て...いじらしすぎる。この子にとっては、彼に電話をするのではなくて、彼から電話が来ることに意味があるんだろうな。)

振られるのが怖いから何も聞けなかった
(ここが一番主人公の本音が出ているようで痛切に感じる。)

(サビ)
車の中はいつも香水のいい香りね
(まるで自分の香水ではないような言い方。男のか?)

私のじゃない
(ここで驚きポイント。自分が持っている香水じゃない匂い。実は彼には別の女がいたのだ。片想いなのにそういう関係という時点で察しはつくが、よりによって香水という目に見えない要素でその存在を感じるなんて、酷すぎる。)

いい匂いがするけど でも嫌い…
(それなのに、いい匂いと歌う可憐さと少しばかりの降参の雰囲気。主人公が嫌いと言っているのは、別の女への嫉妬のほかに、この状況にある意味安住している自分自身のことなのではと思う。大好きな彼の車に匂いを残していけるような女に到底敵わないと思いつつ、大好きな彼と"会う"ことができている今の関係を心からどうにかしたいと思っていない自分への嫌い。)

(Aメロ)
抱きしめられた最初の朝はなぜか嬉しかったわ
(「なぜか」嬉しいとなっているところが切ない。最初の朝以前に、この関係性を十分察していたのだろうか。"付き合う""デートする"というステップを踏まないまま朝を迎えて。それとも、本当に好きな人に抱きしめられるのって意外と怖かったりするから、という前提があるのだろうか?)

何も知らずに幸せ感じてた
(そこに「何も知らずに」と続くのが辛い。そのあと、別の女の存在を知って、そして自分の中のいろんな感情を知って、知らなくて良かったことを知ってしまったんだろうなと思う。)

(Bメロ)
愛ではないと割と早めに気がついた
(わたしが一番切ないと思う歌詞だ。割と早め、という自分を客観視する表現。ここに一種の寂しさを感じる。彼女はどれほどの間、今の関係を続けてきたのだろうか。普通のカップルが迎える〇ヶ月記念日とか、そういう節目にあたる日とか、どんな気持ちで過ごしていたのだろうか...。)

振られるのがなぜ怖い?
(一番に続いて二番でも振られるのが怖いと繰り返している。カオスな状況と主人公の純粋な気持ちのコントラストが辛い。)

ただの片想い
(ではきっとないのだろう彼女の中では。言い聞かせているように思えるのが悲痛だけどいじらしさもあって、私が特に2番が好きな理由はこの"いじらしさ"だ。)

(サビ)
車の中は今日も他の誰かの香水
(冷静に他の女の香水の匂いが残ったまま主人公乗せるって、相手の男は匂いに鈍感なのか?それともそんなこと気にせずに主人公と会っている割り切り?どちらにせよしんどい。)

キスはしないわ些細な抵抗です ここじゃ嫌…
(ギリギリのところでプライドに似た何かを守っているように見える。)

(ラップ)
Oh Baby 車の中の Night & Day
Wa Wa Wa 悔しくて泣いたんじゃないのさ
つまりルール無しなんてだらしない女

(最初に聴いた時、この「女」は自分と知らぬ女とどちらを指しているんだろう?と思ったが、きっと今までの主人公の人物像を踏まえると後者である様に思う。自分のことを"だらしない女"と形容する冷静さがいたたまれなくなる。)

On & On & On, Come On Up, Here We Go
ママゴトみたいじゃぁ Oh My God, Yeah
私を見つけて In The House, Ah
Ah Baby, Yeah, Ah Yeah, Ah

(頼られたい、幸せになりたい、それがこの「私を見つけて」という一言に詰まっている気がする。)

(サビ)
車の中はいつも香水のいい香りね
私のじゃないいい匂いがするけど でも嫌い…
車の中は今日も他の誰かの香水
キスはしないわ些細な抵抗です ここじゃ嫌…

(その後を想像せずにいられない終わり方にて終了。このあと主人公はどういう決断をするのだろうか。続けるも決断、断つも決断。一人の女の子が、本来自分の意思とは関係なしに迫られている決断を抱えながら、今日も車に乗っているんだと。きっと今この時もこの世にそういう女の子はいるんだろうなと、思いを馳せてしまう。そんなリアルを最後まで感じる。)



※ここからは(ここからも)私の勝手な妄想です。

きっとこの歌の主人公は、ドルチェ&ガッパーナどころか、普段香水をつけるようなタイプではない。

香水をつけるという自信の持ち方を知らなかったような気がする。
雰囲気も、派手でも地味でもない、いわゆる普通の女の子なのだと思う。

けれど、好きな人のために香水をつけている。
というか、好きな人の隣にいられるような自分になりたくてつけている、ような気がする。
そして香水をつける日常に慣れてきている頃の歌のように思う。

知らない女の香水が彼の車に残っているように、主人公は彼の心に残りたいと思っている。
自分が彼の中でどのくらい香れているのか、不安に思っている。

香水は、粒子になった水は、そのうちふわっと消えて、香りだけが残る。香りが残らなかったらただの空気(というか水)。
ただの空気、水にならないように、この主人公は必死で香りを残そうとするような気持ちを拝察せずにいられない。
その様が、香水のように甘く、儚く、聴いたあとに余韻が残るような、そんな歌だと思う。

私の妄想力が鍛えられてしまっているが、これだけ解釈の幅がある歌であるし、歌い手によって世界観が変わってくるのも、ハロプロという魅力的な歌い手がたくさんいるチームならではの醍醐味である。

また、しみったれだけの曲に聴こえないのは、つんくさん特有の「リズム」が全体を繋げているからだと思う。このリズムが、独特の色気を生み出している。
(ということで是非曲を聴いていただきたい!)


「この曲を、あの最強お姉さんグループ・メロン記念日が歌うのがまた味があるんだよ!」

「でもいろんなハロメンが歌うのも好き!芸術をみている気分になる!」

「そもそも、それぞれの出だしに、お得意の『ん』が入るのが堪らないんだよ!」

叫びたいポイントは他にもあるが、ここからはヲタクの域になってしまうので控えておく。
(伝わるひとに伝われ)


とにかく、メロン記念日の『香水』は、後世に残るべき名作だと私は思う。
聴いたことがない人は是非聴いていただきたい。(最近では、小嶋陽菜さんがご自身のYouTubeチャンネルで歌ってみた動画をあげています。)

私は、この主人公がこのあといろんな経験を経て、『赤いフリージア』(※)の主人公になっていないかなと想像してしまうところまでがセットだ。
※こちらもメロン記念日を代表する曲なので是非お聴きください。



また、書き留めたいハロ曲があれば書いていきます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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