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気付いてしまった

単刀直入に言うと、私は主治医に恋をしてしまった。
その感情はずっと見ないふりをしていただけで、前からあったものだと思う。
いわゆる陽性転移というやつだ。
主治医じゃなくてもよかった。辛い時の私、入院中の私を支えてくれた先生が別の人だったら、多分私はその先生に同じように恋をしていたと思う。頭ではわかっている。
中学聖日記のレビュー記事で「一途な黒岩くんに胸を打たれる」なんてのほほんと書いていた自分に嫌気が差す。

先生の年齢は多分30歳くらい。普段だったら恋愛対象にも入らない。それでも今はっきりとわかるのは、私は先生が好きだということだ。

先生は9月で別の病院に異動になることが決まっている。それは前から言われていた。でも9月なんて先だし、その頃には回復して先生がいなくても大丈夫になっているだろうと思っていた。
なのに、7月があっという間に過ぎ去って、急にそのことを思い出した今、私はとんでもなく大きな感情に揺さぶられている。
先生と会えなくなることを想像するだけで、すごく苦しい。大丈夫じゃない。嫌だ、離れたくない。別に一緒にいたわけでもないけど。今は週一で会うだけの関係だけど。
強烈にそういう類の感情を覚えて、まるで大切な人が余命宣告されたような、正確にはその経験はないのでわからないが、きっとそんな感じだろうな、という、それほどの気持ちになって、涙が出てきて、やっと自分で認識した。私は先生に陽性転移している。恋をしている。先生が好きだ。

実は今までにも一回、主治医が変わるかもしれないというタイミングがあった。ゴールデンウィークの時のこと。結局変わらなかったのだけど、「かも」を看護師さんから伝えられた瞬間、私は五人部屋の自分のベッドで号泣してしまって看護師さんに背中をさすられた。
思えばその時から、恋心には発展していないまでも陽性転移していたことは明らかで、だからその後別の看護師さんから「先生に恋心を抱いたりというようなことはないですか?」と確認されたのだろう。その時は、「いやいやまさか、先生は私にとって一筋の光をくれる、神様みたいな存在なんです」と答えたことを覚えている。
嘘ではなかった。鬱のどん底にいた私にとっては毎朝の回診と午後の診察で先生が会いにきてくれることが生活のすべてだったからだ。先生が薬を処方してくれる。それを飲む。そうしたら楽になれる。そう信じて、辛く、味気のない日々を毎日生きた。

でも、これは陽性転移だって、自分でも嫌というほどわかっている。私が本当に好きなのは彼氏であって先生じゃない。私を好きでいてくれるのも彼氏であって先生じゃない。私は彼氏のことを愛している。たかが学生の恋愛と思われるかもしれないけど、2年近く付き合ってきて、少なくとも今は本気で、このひとを一生大切にしたいと思っている。
だから、先生に対してのこの感情もいっときのもの。時間が過ぎればきっと忘れる。私はひととしての先生じゃなくて、私を救ってくれた偶像としての先生を崇拝しているだけだ。

書いていたら、自分の気持ちにも整理がついてきた。わざわざここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございます。こんな汚い気持ちの消化に付き合わせてしまってすみません。

9月までは、今まで通り先生としてお世話になる。最後の診察で泣いてしまわないかだけが不安だけど、まあ最悪泣いてしまってもいい。私はうつになってからどちらかというと感情が鈍麻して泣くことすら難しくなっているので、それで吐き出せるならいい方だ。

それではまた。
次回も見にきてくださると嬉しいです(o^^o)

るり

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