見出し画像

【業務用】コラヴァンアダプターの自主制作によるアルゴンガス代の節約方法


ご挨拶

みなさま、ワインはお好きでしょうか。
私は入門して数年ほどですが、3千円や5千円クラスのボトルを開けるようになり、翌日の劣化を顕著に感じるようになりました。

そんな課題に応えてくれるのが、ワインを注ぐ際にボトルに不活性ガス(アルゴン)を封入してくれるコラヴァンという製品です。
https://www.coravin.jp/ja

私は、行きつけのワインバーで使われてるのを見て存在を知りました。

そんなコラヴァンを自宅に導入し、どこに不満を持ち、どう改善しようと足掻き、結果どのように突破したのかをお伝え出来ればと思い、この記事を書いています。

足掻いた結果、初期導入費用を60%カット、ランニングコストを97%カットすることに成功したので、ノウハウをお伝えしようと思います。
特に、ワインバーを中心とした飲食店の皆様には、大幅な利益を生む可能性があるので、ぜひ最後まで確認いただけたらと思います。また、ボトル売りしか考えていなかったお店で、グラスワインの種類を増やせるようになるかもしれません。

無料の範囲でもコストカットが実践できるように記事を作成してますので、ぜひご活用ください。スキをいただけると励みになります。

この記事をきっかけとして、多くのワインバーで安く多くの種類のグラスワインを楽しめるようになれば、それに勝るものはありません。

コラヴァン本体を安く買う

コラヴァン本体は3万円から6万円で販売されており、ワイン初心者にはハードルが高いと思います。

https://www.coravin.jp/ja/shop/category/systems

2021年4月から、コラヴァンピボットという廉価版が2万円強で発売され、私はこちらを購入しました。

もとのコラヴァンに比べれば安く感じますが、それでもまだ高い。
海外製品を安く買うといったらebayです。aliexpressも安いですが、コラヴァンの取り扱いはありませんでした。(ちなみにコラヴァンの綴りはcoravinです。)

ebayにおいて、コラヴァンは主に米国より出荷となり、送料が2千円から5千円程度かかりますが、それでも日本国内で買うより非常に安く購入できます。
私の場合は、コラヴァンピボット+という付属品付きのセットを、元値が2.4万円のところ、送料込みで8千円ほどで入手することができました。破格と言って良いと思います。
価格は高いときもありますが、安い物が出てくるまでウォッチを続ければ良いと思います。過去の販売価格を見る限り、送料込み7千円以下で手に入る時期もあったようです。

ebayにおけるコラヴァンピボットの過去の販売価格

たとえば以下の様な検索条件のリンクをチェックするのが良いでしょう。

https://www.ebay.com/sch/i.html?_from=R40&_nkw=coravin+pivot&_sacat=0&_sop=15&rt=nc&_fsrp=1

ebayを利用される際は、中古品が出品されていたり、日本への配送が出来ないものもあるので、よくご注意ください。

コラヴァンのランニングコストが高い件

さて、ここからが本題です。
無事にコラヴァン本体を手に入れたわけですが、コラヴァンを使い続けるためにはランニングコストを払い続けなければなりません。

なんと…ワインボトル1本あたり…およそ600円です…
※カプセル1本あたり1,750円程度、カプセル1本でワインボトル3本利用可(公称)

ebayでまとめ買いしても、カプセル1本950円くらいにしかなりません。このランニングコストは痛いです。

ebayにおけるコラヴァンカプセルの販売価格

では安くするにはどうしたら良いか、次の章ではそちらについて語りましょう。

ランニングコスト主要因の代替

コラヴァンカプセルに含まれているものは、アルゴン(Ar)ガスです。
カプセル内のアルゴンが無くなることで、ランニングコストが発生します。

では、もっと安いところからアルゴンガスを調達することにしましょう。
日本における高圧ガスボンベの規格は、こちらが参考になります。

https://daitoh-mg.jp/standard/bombe-variation.html

個人利用では500L(0.5立米ともいう)で十分でしょう。業務用途でも、まずは500Lから試すのが良いのではないでしょうか。(以下、特記なければ500Lを対象とします。)

さて、500Lと言われてもピンと来ませんね。コラヴァンカプセルの内容量は、公称6.5gですから、何倍になるか計算してみましょう。
流行りのChatGPT先生によると、以下のとおりです。(検算済)

ChatGPTによるコラヴァンカプセルと高圧ガスボンベの内容量比較

では、高圧ガスボンベのガス料金はいくらなのでしょうか。
ネット上では以下の情報が参考になります。私の近隣のガス会社数社に問い合わせた結果も、5千円以下でした。

アルゴンガスには工業用と、2019年より認められた食品添加用があります。
食品添加用はわずかに高いのですが、それでも5千円以下でした。
調べた範囲では、工業用でも不純物など問題なさそうなので、個人利用であれば自己責任の範囲で工業用でも良いかと思います。業務用途の場合は必ず食品添加用を調達してください。

高圧ガスは、運が良ければボンベレンタルの取り扱いがある業者さんもいるかもしれないんですが、私の周りでは販売のみでしたし、期間も30日など決まっていて超えると延長料金がかかるため、私はボンベを購入することにしました。ボンベレンタルの費用感については以下の動画が参考になります。

このボンベも含め、具体的な調達方法は最後の方にまとめます。

さて、1,750円のコラヴァンカプセルに比べ、アルゴンガスボンベはどれくらいの量で、どれくらいの価格差なのでしょうか。
量は、先ほどChatGPTに確認した通り137倍なので、同じ量だとカプセルは約24万円。実に48倍という価格差(=96%カット)になるわけです。

アルゴンガスのコラヴァンへの接続方式比較(失敗談を含む)

第1案

アルゴンガスが手元にあるので、コラヴァンを使わずにワインボトルにアルゴンを封入する事も考えるべきでしょう。
そのような既製品「アルゴン ワインセーブ・プロ」が存在し、以下のように比較記事も存在します。

しかし、私は凝り性なので、絶対にコラヴァンに繋げたいと思い、この案は却下です。飲食店の場合も、上記記事によると1週間で変化しているため、この案は取れないと思います。

第2案

「コラヴァンアダプターシステム」の購入です。非常にニッチな市場ながら、国内ではノーブル サヴェッジ ワインラボさんが15.4万円で販売しています。

他に、海外製品ではebayで販売されているものを見かけましたが、送料込みで6万円ほど。しかも、海外規格なので使えたものかわからず、トラブルが怖いです。

どちらの製品も、アルゴンガスボンベとコラヴァンを直結させており、シンプルながらボンベから離れることはできません。使い方のイメージは、ノーブル サヴェッジ ワインラボさんの一員?であるバー葉隠さんの上げている動画がわかりやすいです。

2019年にアルゴンの食品添加が認められてから、2020年末にはシステムを作り上げて動画を公開していることは、素直に素晴らしいと思います。
一方で、視聴回数が2年半で500回以下である点から、このニーズのニッチさに不安を感じます(笑)

第3案

コラヴァンカプセルの互換品を使う、という選択肢です。
ただし、コラヴァンと同等品は世界的にも販売されていません。
しかし、頭の黒い部分を外した状態との同等品は、販売されているのです。
詳細は以下動画がわかりやすいです。

しかしここでも問題があります。動画内で紹介されているWINAROのボンベは意外と高くて、1本あたり850円(送料別)ほどします。だったら、ebayでコラヴァンカプセルをまとめ買いしたほうがマシです。

他にも調べてみましたが、国内販売はおろか、日本への送付が可能なアルゴンガスカートリッジの会社を見つけられませんでした。

第4案

第3案の変形として、ガスボンベからコラヴァンカプセルに、ガスをリフィル(再充填)することを思いつきました。
同型らしきCO2ボンベに、「各自で再生が可能」とあったので、リフィル出来るものと思っていたんです。

ソーダストリームのガスシリンダーはボンベからのリフィルが可能なので、同じように行けると思ったんです…

この案に最も時間とお金を使って試行錯誤しました。
結論として、カートリッジは封版で密閉されているだけで、逆流防止弁のようなものがないため、再充填はできないことがわかりました。
カートリッジの構造については以下サイトの「安全封板」の項がわかりやすいです。

接続方式まとめ

さて、こうして右往左往した結果、第2案が有望ということがわかりました。先人は正しかった。

コスト比較

アダプター制作にかかる初期費用

まず初めに、第2案で15.4万円や6万円かかっていたものを、いくらで作れるのか、を発表します。

ズバリ、2千円以下で作れます。
もちろん全く同じものではありませんが、コラヴァンとボンベを直結してワインを注ぐことが出来るという点で劣るものではありません。

ではここでコストを比較してみましょう。
改めて構造も整理します。

コラヴァンアダプターシステムとの価格比較

コラヴァン本体はお持ちの前提で、そこから追加でかかる費用という観点でお話します。

ガスボンベ費用は、調達方法によりある程度幅がありますが、おおよそ上記の金額となります。これはどちらの手法でも変わりません。(販売物に含まれていません)

レギュレータは、ガスボンベが高圧で危険なので、圧力を下げるためのものです。本記事では市販品を採用し、選定ポイントやネット上の具体購入場所も後述します。規格が複数あり落とし穴に落ちやすい箇所なので、安易に購入することはオススメしません。

アダプター類は、複数パーツからなり、レギュレータとコラヴァンを接続するものです。コラヴァンアダプターシステムは特注品を利用していましたが、ここでは市販品を利用します。
このアダプターを作り上げるにあたり、いくつかの専門店を訪問して、説明・交渉を行いました。専門店では、1万円以上かけて特注品を作る選択肢を提示されたため、本当に市販品でうまくいかないか、実験と失敗を繰り返し、たどり着いた組み合わが本記事で紹介するものです。

損益分岐点

本記事で紹介するシステムは、コラヴァンアダプターシステムに比べ安いとはいえ、主にボンベ購入代に引きずられ、合計費用は高止まりです。

当初のモチベーションは、コラヴァンカプセルよりランニング費用を安く抑えることでした。では、どれくらい使ったら初期費用を回収できるのでしょうか。
ここでは、ワインボトルの本数換算で計算してみたいと思います。
前述の通り、

  • コラヴァンカプセル1本で、ワインボトル3本分のワインを提供できる

  • ボンベ(0.5立米)はコラヴァンカプセルの137倍の量がある

という計算から、ボンベ1本でワインボトル400本以上の提供が可能になります。
また、ガスの再充填は私の近隣のガス屋さんから聞いた価格を切り上げて、1本あたり4,500円と定義します。

ボンベ4,500円とすると、ワインボトル1本辺り11円弱となり、長期で利用するとこの値に近づいていきますが、ここでは初期費用を含めた損益分岐点を確認することを優先します。

横軸にワインボトルの本数(10本単位)をとり、縦軸にワインボトル1本あたりの価格を取り、コラヴァンカプセルと本手法の初期費用+再充填費用を、ボンベに1回再充填してそれが無くなるまでをグラフ化すると、以下のとおりです。

ワインボトルあたりの単価費用変化

上記の通り、損益分岐点は60本以上70本未満の部分にあります。
仮に飲食店で6杯取りしているとすると、420杯以上売れば元が取れます。1日60杯売ると1週間で元が取れます。

ちなみに、1日60杯の試算根拠ですが、ワインバーを経営していくにあたり、手元に日額2万円を残したいとなると、建物・光熱費やワイン自体の原価を加味すると3倍は売上が必要です。すると1日の売上は6万円は確保したく、グラスワインの平均価格が千円とすると1日60杯売りたいことになります。

先程のグラフは、本記事への投げ銭を加味せず、コラヴァンカプセルも定価での試算でした。
本記事の有料部分を購入いただいた費用(5万円に仮置き)を組み込み、コラヴァンカプセルもebayで安く仕入れた前提でも比較しておきましょう。

記事費用込みのワインボトルあたりの単価費用変化

こうなると、元を取るために必要な販売数は、ワインボトル300本です。前述の条件だと、30営業日で元がとれますね。

また、純粋なランニングコスト(ガス代)の差分は、ワインボトル1本あたり572円(コラヴァンカプセル定価の場合)となるため、前述の条件であれば一日あたり5,720円のコストカットになるので、合わせてご参考ください。

耐圧検査代

ここまでで言及してこなかった費用として、耐圧検査代があります。ボンベ購入を前提に話を進めてきましたが、ボンベには5年毎の耐圧検査が必要であり、私の周辺のガス屋さんでは8,000円弱かかります。

飲食店の場合は、上述の金額に比較すると無視できるレベルかと思います。

個人の場合は、ワインの消費量にも限界があるのでこの費用も考慮したい場合が多いと思います。
しかし、耐圧検査が必要なのは、再充填のタイミングであり、耐圧検査期限の切れたボンベを使い続けることは、法的にも安全面的にも全く問題ありません。
したがって、4年11ヶ月経過した時点で再充填を行い、さらに数年間(たとえば5年など)かけて再充填分を使い切って、当初から10年経過してから耐圧検査+再充填を行っても問題ありません。
年間800円ほどですから、飲食店の場合と同様、やはり無視できる範囲でしょう。

さらにコストカットするには

いままで0.5立米で話を進めてきましたが、ボンベには1.5、3.0、7.0立米が存在します。ここで、1.5立米の場合の試算も簡単に行います。

ボンベ価格は、0.5と1.5でそれぞれ、27,500円と35,000円ほどです。
再充填費用はそれぞれ、4,500円と5,000円ほどです。
量は3倍になるのに、金額差は微々たるものです。

飲食店の場合で、更にコストカットしたい場合はこちらも選択肢に入るでしょう。
計算式は省略しますが、この場合も損益分岐点はほぼ変わらずワインボトル320本程度。純粋なガス代としてのランニングコストは、ワインボトル1本あたり4円まで下がります。

盛況な飲食店では0.5立米より大きなボンベを選択肢に入れても良いかもしれません。

まとめ

ここまでの説明で、飲食店はもちろん個人でも、アルゴンガスボンベと本記事で紹介した手法を導入するコストメリットは感じていただけたと思います。

ガス代として、ワインボトル1本あたり600円近い価格が添加されていたわけで、これを11円弱まで下げられるのは非常に魅力的であると思います。

それではみなさま、良いワインライフを!
と締めたいところですが、肝心のパーツ類の選定結果をお伝えしていません。

ここからは有料記事とさせていただきます。具体的なパーツの型番や購入場所を記載し、うまく接続できない場合は相談にも乗ります。
私自身のパーツ購入の失敗費用や実験に使った時間(半年ほど)を考えると、決して高い価格ではないと考えています。

なお、「大学で工学部機械工学科だった」とか「流体工学と機械工学が趣味」とか「高専出身」とか「配管工の経験がある」とかだと、ここまでの記載内容から自分でパーツの選定が可能かもしれません。
それを止める気は全くありませんし、どんどんトライしてもらえば良いと思います。

有料部分は価格に見合った価値をお届けできると自負しています!
ここまで読んで役に立ったと思う方は、投げ銭感覚でも有料部分を購入していただけたら嬉しいです。

買うべきパーツ類

早速ですが、買うべきパーツ類を記載します。同型のパーツの中でも安いものを選定しています。
販売終了しているものがあれば、同規格のものを選定頂いて構いませんし、ご連絡いただければ可能な範囲で更新したいと思います。
なお、私はこれでうまく行きましたが、パーツの相性を保証するものではありません。予めご了承いただき、必要に応じてパーツの規格は各自でも確認ください。

なお、以下に記載のない道具として、「六角レンチ」ないしはそれに類するものをご用意ください。

アダプター類

ここから先は

5,150字 / 15画像

¥ 50,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?