マンガ『ここは今から倫理です。』を知らない人向けメモ

 今、最も読むべき漫画。それは、間違いなく『ここは今から倫理です。』だと思う。何が魅力なのか、知らない人に教えたい。そして、ぜひ手にとって読んで欲しい。

 舞台は高校。主人公は“恐らく”倫理の授業を担当する高柳という一風変わった男性の教師。

 “恐らく”というのは、主人公という概念が、この作品は弱いから。群像劇に近い形の構成になっている。

 そのため、主人公は各話変わるといった方が正しいかもしれない。なぜなら、基本的に高柳の受け持つ生徒が主体で話が進むからだ。個性的でありながらも、その分多くの問題を抱える生徒に、高柳は「より良く生きるためのヒント」を授ける。

 あなたの高校時代を思い出してほしい。人に打ち明けられないような苦悩が少なからずあったはず。そして、今もなお、そんな苦悩を抱えている人もいると思う。この漫画は、そういう人にこそ大きく刺さる。

 作者・雨瀬シオリの、暖かく豪快なタッチの作画は、読み手に没入感を与える。ページをめくるうちに、高柳の受け持つ生徒たちは、私たち読み手にすり替わり、あなたは高柳の授業を受けているかのような感覚に陥る。気づいた時には、読者は高柳の生徒になっている。そして、倫理という学問の奥深さを追体験することになるのだ。

 高校倫理は選択授業だ。取らなくても卒業できるため、勉強していない人も多いだろう。倫理は、あまり“社会”から必要とされない学問なのかもしれない。それでも、辛い時に救いになるような考えや言葉をたくさん知ることができる、“人間”にとって最も重要な学問だと思う。

 この漫画を読めば、そんな倫理のエッセンスに触れることができる。きっとあなたの心にもグッとくる言葉が散りばめられている。たくさんの悩みを持つ現代人にこそ読んで欲しい哲学系学園コミック、読まずに生きるのは勿体無い。

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