Vol.4 Drug Store Romeos / The World Within Our Bedrooms
Drug Store Romeos
The World Within Our Bedrooms
(2021)
Fiction Records
ドリームポップという言葉を初めて聴いたのはいつのことだったろうか。多分Beach House、Now, now、Alvvaysなどの音楽を知った頃にそれらがドリームポップと呼ばれていたような気がする。
そもそもはTycho(ティコだと思ってたらどうやらタイコと発音するらしい)が好きで、こだまの森で行われていたタイコクラブというフェスで彼らがバンド編成になったライヴを観た時に、目を見開いて立ち尽くしてしまう程の衝撃を受けたのが始まりだった。
映像もさることながら、生バンドだからこその、音の取捨選択の完璧さ加減と、まるでその場が光の中に包まれたかのような、そして彼らのモチーフによく使われていた、深く怖いものではなく、母なる自然としての海の中で興じているような、なんとも言えない多幸感に満ちたその場の雰囲気に圧倒された。
それまでテクノのトラックしか作っていなかったのだが、そのライヴの影響でSix Lens Productionsというバンドを組んだりもした。
このように、とにかく大きな影響を受けたのだが、Tychoが好きだという人は結構バンド畑にもいて、その流れで知ったのが、ドリームポップのシーンだった。
Lo-fi ポップ、ベッドルーム・ポップなどと呼ばれるような可愛らしく夢心地な音楽から、シューゲイザー的なものまで意外と幅広く展開されている音楽に自分は夢中になり、今も掘り続けている。
そのシーンに綺羅星の如く現れたと言っても過言ではないのが、今回のDrug Store Romeos。まだまだ若く素朴な佇まいの彼らは、女性1名に男性2名の3人組で、担当楽器は正直よくわからない・・・
ライヴを見る限り、紅一点のSarah Downeyがボーカルとシンセを担当しているようではあるのだが、後の2名がベースだったりドラムだったり(打ち込みの場合もある)ギターだったりを兼任しているようでもありするのだが、それだと楽曲の構成上不可能な曲もあったりと、現在のところ謎のままである。ひょっとしたらリズムは全部打ち込みで、2名がギターとベースを担当している可能性もある。
ともあれ、このデビューアルバムの完成度は高く、一気にファンになってしまった。収録されていない過去のシングルなども聴いたがどれも素晴らしい。その魅力と言えば、囁くようなボーカルと、ドリーム・ポップとしか言いようがない夢心地なサウンドと、雰囲気で終わらないポップさ加減だろう。
今後の展開が心配になってしまう程、光り輝くようなデビューアルバムだと思う。どうか今後もこの若き3人組が、このアルバムを遥かに越えるようなセカンドアルバムを作れますように。
A1: Building Song
歌うようなベースラインにシンプルなビート、そこにシンセとギターが絡み合っていき、満を辞してボーカルが始まるという本当に見事なオープニングを飾る曲。むしろこの曲を聴いて何も感じなければこのアルバムは好きではないかもしれない。歌メロディーもとてもよく、現在のところ一番好きな曲かもしれない。
A2: Secret Plan
途中でテンポが半減したり、シャッフルがかったりする小賢しさもあるが、冒頭からずっと鳴り続けるシンセとよく聴こえるベースラインが印象的な曲。シンセも全般的な凝った音だったりはせず、YAMAHAのRefeace-CSなどの安価なシンセで充分作れる音。ライヴを見るとCASIOのCT-401を使っているようにも見えるが詳細はわからず。
A4: Elevator
シンセのシーケンスから始まり、ギターレスのまま、ベースがメロディアスにフレーズを奏でる。途中から入るシンセパッドの音は幻想的ながら、どこか牧歌的な雰囲気が漂う曲。
B1: Walking Talking Marathon
安っぽいリズムボックスの音がループされる中、白玉シンセと可愛らしいボーカルが乗り、時折、SEやマラカスのような音が鳴る以外は、それらのみで展開されていく潔い曲。
B2: Frame of Reference
3人がとにかく踊りまくるビデオも制作されており、シングルにもなっている。演奏シーンを見る限り、彼らが演奏しているのはボーカル、ベース、シンセのみ。確かにリズムは打ち込みぽいのでこの曲は納得だが、他の曲もリズムは打ち込みなのだろうか?シンセの印象的なフレーズが耳に残る流石シングル曲。
B3: Feedback Loop
ミドルテンポの打ち込み曲。どの曲にも言えるが、このベースでベースラインというよりもフレーズを奏でるスタイルは少しニューオーダーを感じる。この曲では後半で少しギターも登場。
B4: What's On Your Mind
この曲もシングル曲だが、とても幻想的な曲調で始まり、ボーカルも可愛らしさというより神々しさを感じるもので、壮大とまではいかないが、夜明け頃などに聞いたらハマりそうな素敵な楽曲。そして後半に向けて盛り上がりを見せ、朝方を迎えるような構成。
C4: Kites
こちらも打ち込みのリズムにシンセと可愛らしいボーカルのとても優しい曲。若干のエレクトロニカ的なクシャっとした音なども絡む。シンプルながらしっかりとした構成などもあり、適当な埋め合わせの曲ではない佳作。
D3: Adult Glamour
最後に相応しいしっとりとした曲。これまでのドリーミーな感じとは一味違う、地に足のついた楽曲。森っぽさというか、夢心地というよりは自然を感じる曲。やはりこのバンドは幅が広く奥が深い。
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新しい音楽も聴いてますよということではないのですが、比較的最近出たアルバムを敢えて紹介してみました。エレキングでも既に紹介されているようなので迷いましたが、素晴らしいものは素晴らしいのと、いち早くライヴに来てもらうには数多く紹介文があった方が良いかしらなどとも思い。
もちろんそんなに影響力はありませんが、このバンドは何かを秘めているなとどうしても感じたのです。個人的には朝霧JAMあたりで聴いたらとてもハマりそうだなと思っております。
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