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不条理短篇小説

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現世に蔓延る号泣至上主義に対する耳毛レベルのささやかな反抗――。
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2016年6月の記事一覧

短篇小説「動詞君ノンストップ」

駅前の喫茶店内であばれる君があばれ出したとき、勇敢にも彼を止めにかかったのは店長のふられる君ではなく常連客のつよがる君だった。ふられる君は昨日雇ったウエイトレスにたったいま厨房でふられたばかりで、それどころではなかったのだ。

とはいえ、特に格闘技をやっているわけでも体を鍛えているわけでもないつよがる君が百戦錬磨のあばれる君に立ち向かったのは、単なるつよがり以外の何ものでもなかった。つよがる君があ

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