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不条理短篇小説

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現世に蔓延る号泣至上主義に対する耳毛レベルのささやかな反抗――。
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2016年4月の記事一覧

短篇小説「揺れながら落ちる寿司」

短篇小説「揺れながら落ちる寿司」

「回転寿司は、どうして回っているの?」

街道沿いにある全国チェーンの回転寿司店内に、男の子の素朴な疑問が響きわたった。タッチパネルで注文するタイプの大型店であるため握り手の姿は遥か遠く、その問いかけは届くはずもない。少年の左隣に座っている母親は、ガリをつまみながら趣味の押し花のことばかり考えている。疑問はすっかり空中分解するかと思われたところに、少年の右隣でスポーツ新聞を広げながら寿司をパクつい

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