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人を動かす秘訣は、まず相手の言い分に耳を傾けることだ

製鋼王 カーネギー

●カーネギーの成功の秘密は、自分より才能のある人を集めて、その人たちを手足のように動かしたことにある。そのカーネギーが、人を動かす秘訣を述べたのが、タイトルの言葉である。

●人の上に立つものは、部下の身になって熱心に話を聞くことが大切だ。といっても、黙って耳を傾けていればよいというのではない。うまくあいづちを打つことが大事なのだ。「上手なあいづちは、人の心の真実をくみ出す誘い水である」という言葉があるぐらいである。

●戦国武将で聞き上手の第一人者は、徳川家康であった。

●あるとき、若い家臣が家康の前に進み出ていった。
「ここに、以前から申し上げたいと思っていましたことを、十ヵ条にまとめてまいりました。お目を通していただけませんでしょうか」

●家康は快く応じ、かたわらの本多正信に読み上げさせた。正信が、一条ずつ読み上げるたびに、家康はうなずいて聞き、正信が読み終わると微笑を浮かべて、いった。「ご苦労であった。また気づいたことがあったら聞かせてくれ」

●若い家臣が顔を紅潮させて退出するのを待って、正信が声に出して笑った。
「殿のお役に立つことは、一つもございませんでしたな」

●家康がたしなめた。
「そのように言うものではない。確かに役に立つことはなかった。しかし、そういってしまえば、二度と意見を出す気はなくなるだろう。優れた意見かどうかは、わしらがその判断をすればよい。人の意見を聞くときの心がけは、たとえ未熟な意見であろうと、わしや徳川家のためを思う熱意と親切心をくみ上げていくことである」

●まさに至言である。家康の聞き上手はね若いころからのものであった。本多忠勝の述懐によれば、家康は青年武将であったころから、軍議の席で何も発言せず、耳を傾け、議論百出して、意見が出揃ったころに発言して、総括したという。

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