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嗜虐心、羞恥、支配。アブノーマルな欲望が絡みあう青春コミック!『可愛そうにね、元気くん』

こんにちは! 漫画ソムリエの東西サキです。

ふだんは東京ネームタンクで漫画の持ち込み先進路相談をしています。マンガ技術研究会では新連載をひたすら集めて読むお仕事もしています。そんな私から見てオススメの漫画をご紹介して参ります。

どうぞよろしくお願いします!

今回ご紹介する物語は、可憐であるがどんくさいヒロイン・八千緑と、そんな彼女の悲痛な様子に興奮し妄想する主人公・廣田元気、彼の秘密を知るクラスのマドンナ・鷺沢守の奇妙な関係性を描いた物語です。

あらすじ

主人公・廣田元気はクラスメイトである少女、八千緑の悲痛な様子に性的興奮を覚えつつ恋愛感情を抱いています。

八千緑は彼にとって「理想の不憫な少女」であったが、主人公はそんな自分の彼女に向ける欲望がまともではないと葛藤し、その欲望のはけ口として漫画を描いています。

しかしある日、秘密をクラスメイトに知られてしまいます。相手はクラスのマドンナ的存在である鷺沢守。主人公の悪評が広まってしまうのか、と思いきや……

……勉強はもとより運動もできる正統派美少女である彼女にも秘密があったのです。

それが「人を支配コントロールしたいという欲望」。

主人公は彼女から「今日から私がお前を飼ってやる」と脅迫文句を打ちつけられ、誰もが隠している欲望が絡みあうという展開へと物語が進んでいきます。

倒錯した性癖や歪な人間関係を題材に選ぶ理由

主人公の性的嗜好は苦痛に晒されて苦悶の表情を浮かべる様子や物理的暴力で悲鳴を上げるシチュエーションに興奮する、所謂「リョナ」と呼ばれる性癖で一般には共感できない趣味といえます。また主人公以外の周囲の人物達も倒錯した性癖や人には言えない願望を持つ人々で配置されています。

では、なぜこの作品の主要登場人物達は、みな特殊な性癖や秘密をもっているのでしょうか?

それはおそらく……思春期特有の自己嫌悪と逆説的な自己陶酔ある恋愛を表現するため……なのではないでしょうか。

リョナ趣味や願望を可視化することで、10代特有の秘密や危ういバランスで成立している人間関係を演出表現しているというわけです。

秘密が織りなす青春模様

それぞれの抱えている嘘や秘密はストーリーを重層的にし、キャラクターの表情や言動も、なにが嘘でなにが本心なのかを探る面白みや駆け引きある恋愛ドラマの描写に成功しています。

倒錯した青春ラブロマンスどこに向かうのか?

興味がある方はぜひ読んでみてください!

WRITTEN by 東西サキ
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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